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トンボ
トンボが低く飛ぶ
風が強く
空が陰る
妙に涼しげな生ぬるい風
秋への移り変わりの時期か
入道雲を見かけなくなった
地上へ降りてくる雲
今日という日を大地へ運んでいる
朝日が昇るまで
空に浮かぶ雲は白い形を浮き彫りにした
西の空はまだ眠っている
1秒1秒変化の大きい時間帯だ
西に一部だけ白ぼんやりとした場所がある
灰色の雲の下には満月から新月へ向かう姿があった
雀が鳴き始め
チリチリチリチリ
リンリンリンリンと鳴く声が
小さくなっていく
夜が終わったのだ
と思ったらそうではない
虫の単調な響の中に
鳥の声がソリストの如く現れる
柔らかく規則正しい虫の交響曲は
昼を生きる者たちとの活気溢れる曲へと繋がっていく
月の光は存在を消していった
東の空は赤く燃える
鱗雲は赤オレンジの情熱色
時と変化し続ける空は心をいっぱいにする