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蔦 (つた)
大木の頭上から垂れる蔦
蛍光ピンクの蔦に思わず立ち止まる
正確にはピンクのものと玉蜀黍色
一本で垂直に降りてくるもの
絡まり風に揺られても鈍い動きをするもの
大木下の垣根に蔦が垂れている
何本も絡みつき風が吹いても離れない
引っ張って見ても千切れない
十年後この垣根は大木の蔦に飲み込まれているだろう
あらゆる方向から入りこみ
執着と強かさが薫る
大木は若いガジュマルの樹なのだろうか
そういえば老成したものしか見たことがない
細い棒を組み合わせ溶け込ませているような
幹はガジュマルのそれと似ていると思う
世の中には沢山の植物が生きている
別物と分けることも
同じものだと断定することも
容易ではないので調査は諦める
カランコロンコカッ
音を放ちながら落ち葉が歩く
水は絶えず流れれ
微風が涼を運ぶ
二匹の白い蝶が戯れ森へ消えてゆく
木の葉の擦れる後と鳥の声が眠気を誘う
楽園とはここのことなのだろう
思えば蝉の声がしない
命は短い