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漆黒の旅
夜の森は漆黒
建物よりも深い黒に落ちていく
目が開いているのか閉じているのか
閉じても開けても同じ景色が広がる
光を見つけた
遠くに小さな光源がある
安堵する
森の圧倒的支配感に押し込まれ足を光源から遠ざける
温度はちょうど良い
風が吹き続け半袖には肌寒い
少なくとも二種類の虫が、
いや、三種は鳴いている
星を見上げると木の小枝が小刻みに揺れている
星は動かない
むわっとした匂いは来て去ったようだ
匂いは湿気と一緒にバカンスにでも行っているのだろう
長期旅行を願っている