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真夜中散歩
夜に蝉は泣かない
代わりに他の虫達が鳴いてる
街灯の灯りが恐くて街灯を避けて歩く
うわっなんて眩しい灯なんだ、と目を細めた
月だった
街灯のオレンジ色に負けず黄色っぽい白の月の夜だった
匂いがしない
ほんの少しだけ匂いが変わる、柔らかい
また匂いがしない
道の花の香りを嗅いでも匂いがしない
コンビニ横にある室外機が見えたとき匂いがする
鼻は付いているが呼吸しづらくする器官に成り下がっている
自分の匂いがしたら
足の匂いがしたら
汗の匂いがしたら
口の匂いがしたら
鈍感にあるほど周りのことに敏感になる
夜中の散歩は気持ちまで沈めるらしい
手にシュークリームと左手に財布を持ってまた同じ道を歩く
南国の花は夜には気配を消すようだ
心を癒すのもお仕事なのよ、とばかりに黒い。