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「しっけ」と名付けられたぼく
ぼくは床に置かれた機械に吸い込まれていく。
フィルターを通り抜けた。埃と小さな糸くずがフィル
ターにくっついている。ぼくは通れる。体が小さいし
ね。すごい力でぐんぐん吸い込まれる。他の仲間たち
も一緒だ。流れに逆らう気はないのって?ないねぇ、
ぼくは流されて生きていくのさ。何だか妙に寒い通路
だな。クーラー効きすぎだよ、もう。変身しちまうじ
ゃないか。暗いし、寒いし、狭い、はぁ、なんかみん
なとくっついて暖を取りたくなってきた。くっついた
ら空間が広く感じるし。暗くても寂しくないし…。ゆ
らっゆらっ。大きな揺れで目が覚めた。いつのまにか
眠っていたようだ。
「ちょっと、直子除湿機の水捨ててきて。」
「ええっ、重いじゃん、何これ。」
ぼくは激しく揺さぶられる。
「どこに流せば良いの?」
規則的な揺れと共に ぼくは新たな地へ行くようだ
「庭のお花にかけて。優しくよ、花にかけちゃだめよ。周りの土にかけてきて。」
「注文の多い母上様だこと。」
「なんか言った?」
「さぁね。」