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魔女の夕餉
りんりんりんりん
夜の虫が鳴く時分
魔女の夕餉が始まる
草のはみ出たフェンスの奥
歩道を食い尽くさん勢いの緑に人は寄りつかない
人の気配
ほれ、そこのあなた。
少し覗いてみようか。
着物姿の柔らかい雰囲気の淑女に手招かれ
ふらっと追う
草を掻き分けフェンスを通り抜ける
みしゃ、くしゃ、草を踏む音、擦れる植物の音
案内人の足の置いたところに私も置く
ひたすら彼女の足を追う
大木の幹が目の前に現れた
案内人の足が消えた
案内人も消えた
幹の反対側に回り込むと
魔女の夕餉が始まっていた