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雨が心地良かった
圧の強さに皆傘の柄を両手で握って歩いてゆく
雨が心地よかった
風は吹き荒れあたりは暗く雲に覆われる
雨が心地よかった
坂道を土砂混じりの水がどうどう駆けて行く
雨が心地よかった
空がまばたきをすると轟々と太鼓の音が響き渡る
雷のなく音
安心感
暗く深い部分が安らぐ
腹の底に届く唸り
これは
お腹の音だ
ごろごろごろごろ
太鼓の響く心地よさ
お腹が奏でる心地よさ
雷のなる心地よさ
ロングスカートがずっしりしてきた
屋根の下にいるのに
飛沫が風に巻かれて布を濡らす
白い布が足に絡みついて離れない
風向きがころころ変わり
月桃の葉もぐわんぐわん揺れて一緒になって遊んでる
雲の上には何がいるのだろう
何が起こっているのだろう
目の前が白く光る
ごろごろごろごろ
お腹の底が揺れる
雨がただ気持ちよかった