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夏
いつ来たのか梅雨よ
知る間もなく蝉が鳴いた
空の色が変わった
雲の形が変わった
夏の空とは
こんなにも広く壮大で胸を圧迫するものだったのか
思わず手を伸ばす
目の前が潤んだ
呼吸を思い出して胸いっぱいに息を吸い込む
浅葱色の柔らかく薄い空は
深い紺色を奥に忍ばせた青い空になっていた
天井が一気に引き上げられ
天と地の距離を感じる
玩具箱の蓋が開かれるのを中から見ている気分
外の世界の明るさ無限の広がりに息が詰まる
暑さを忘れた
気づけば額に手を翳し
佇んでいた
陽射に目をしばしばさせながらひたすらに雲を捉えた
てんとう虫が葉っぱに止まっている
おろしたてのようにつるりとした背中
白く眩しい葉っぱの中で
彼は風に揺れる葉の上で踊っていた