我が力量の外側
幻影的な朝が始まった
昨夜から降り注ぐ、いや、舞い降りる
霧雨が建物を水の中に沈めた
霧はやがて形を持ち始め服が絞れるほどの
雨粒を落とすようになった
雨があがり、城跡へと入ってゆく
雨に濡れたものたちは
雲間から見える太陽の光に輝き出す
鬱蒼とかげる翳る植物の棲家へ
白い線が降り注ぐ
それは柔らかくあたたかなものだった
雨で補給するなにかと太陽で補給するなにか
は違うように見えた
石で隔てられた空間
石の道を靴が歩く
黒い土の上に植物が蠢く
石段の苔が色濃くなっている
角度のある階段を覆う苔は海の植物を連想させた
絵に残したい
絵で表現したいこの精霊のいる空間を
私に見えている空間を
是非私の目玉をみんなに貸し与えてみて欲しい
写真だと見え方が違うのだ
だから困ってしまうのだ
気持ちの良い風と身長をゆうに超える石灰岩
とそこに根を張る植物
悠久の時を感じる
力をもらえる
腕を広げ胸いっぱいに空気を吸い込む
ああ、我が表現したいことができない苦しさ
もどかしさ
メガネをしていない若干視力の弱い我には
写真ほどはっきりとは見えていないし
色もカメラだと変わってしまう
風が匂いが空気感が温度が伝わらないのが悔しい
空間そのものの魅力を感じてもらいたい
語彙と表現力でこの空間を頭に思い描かせたい
体験してもらいたいものを伝える力が欲しいと
思った今日であった