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風
カーテンの隙間から光が入る
鳥のさえずり囀り
あたたかくて気持ち良い
時間を確認しもう一度布団に突っ伏した
目を覚ますと先ほどのぬくもりはなく
ただ灰色の世界が広がっていた
向かいのマンションの塗装の色が見えるから
正しくは青と灰色の世界だ
あの極楽浄土にいる様な気持ちの良い朝は夢だったのだろうか
活力が太陽から恵みの雨として降り注ぎ
体の中に注入されて満たされていた
はずだった
今となってはもう分からない
あの一度目の目覚めは本当に目覚めだったのか
欲望が目の裏に作り出した幻想なのか
考えるのが面倒になり
何も考えず靴を引っ掛け扉を開ける
風がコンクリートから生える草葉を裏返す
体が風に乗る
だんだん楽しくなってきた
生きている
そしてきょうがあって今風を感じている
幸福感でいっぱいだった