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かすみの空
春のかすみ
桟橋から覗く水面は細かく光る
空は白雲が豪快な形振りで太陽が顔を出すのを
邪魔する
まるで子供のいたずらのようだった
足早にどんどん駆けていく雲
雲の太陽が顔を出す
かすみがかった水辺と森と太陽は
この上なく幻想的だった
かすみの中の空は黄色と紫と白とほのかな桃色が
グラデーションで現れ常に移り変わっていた
息を飲む美しさにひとときも目を離せなかった
鳥の声が絶えず交わる
桜の花に止まっていたずんだ餅色の鳥は
桜の花びらと一緒にどこかへ行ってしまった
今、鳴いているのはどんな鳥だ
窓から入ってくる風がそよそよと
カーテンを揺らす
日差しを雲が飲み込んでいる
地上は過ごしやすい
雲が青空を覆い隠して
気温だけは寒すぎない
半袖の腕も鳥皮にはならない程度だ