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春が来た
春の匂いがした
春が来たのだ
花の芽吹く匂いと柔らかい風が体を包んだ
あたたかくはない
それでも体を心を包む空気が変わる
風が新たな季節を運んできた
たんぽぽの花が揺れる
もう少しするともっさり銀髪アフロになって
遠くへ風のり世界を旅する
灰色に覆われていた空は蒼く染まり
白い雲が軽やかに駆け回る
灰色の雲の上には太陽が燦々と照っていたはずだ
そんなことも忘れ、太陽の存在も忘れていた
そんな幾日を越えて今がある
昨日の夕暮れ時、霧もやが街を真っ白に変えた
橋からみる街は消えて山だけがあるような
遠近法を置き忘れた絵画のような
「日常」のもので日常でない怪奇な空間
に在ることに今気づいた
冬は終わったのか、
今はまだ冬という
知らぬ間に入り込み抜け出せない
沼の中なんじゃないだろうか、
これは沼の幻想なのか、
春は来たのか、