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夕方あと
灰色の雲が時間感覚を狂わせる
西の空だけがオレンジ色に染まっている
夕日の残り香で大気が色づいていた
見ているだけで火を思い出す温かさを有していた
街灯が照らす
粒を葉先に丸く蓄えた枝
枝は黒く影になり濃緑が隙間から顔を出している
粒に光が入り
艶やかに
泣いている女性を思い出す
満月から新月へ向かい始めている
たまに雲間から現れるが光の強さは隠れている時と変わらない
風にたなびくガジュマルの髪は美しかった
先ほどまでの雨を纏い、街灯のほの白い灯りで
ぼんやりと浮かぶ
悲しみが心に迫るほど美しかった
この光景が壊れてしまう瞬間が訪れることが
わかっている悲しみだった