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波
鈍い銀色の空
イヤフォンを外してみると見える世界があった
イヤフォンの充電が切れた
耳から入る情報で創り出された世界は一度幕を下ろす
所在なさげに周りを見渡すと池に鷺がいた
ラインの綺麗な姿は立ちすくんでいるだけで美しい絵となる
雨上がりの冷凍庫のような寒さの中にあってそれは
洗練された強さ 命の逞しさ 優美さ
を持っていた
水が反射して水のあるべきところに森を作る
もう一つの世界があの中には出来ていた
親指をつけた瞬間ぐるっと体が回った
目の前を地面にあった石が通る
360度体が回転すると止まった
感じた
光による水の反射だと思っていたものは
形ある世界なのだと
音で作る世界と光で作る世界
波が私達の世界を作っている