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濡れそぼる花
体に柔らかい水滴が触れる
空から降ってくる雨
仕事終わりの道を傘をさして歩く
街灯の光が葉と葉の間にある花に落ちた
丸い水滴を花びらの上に乗せている
複雑に波打つ花弁の塊は
雨が当たる度小さく揺れた
夕方にも露を付けていたが
闇の中蛍光灯の淡い光に浮かび上がる
ピンクオレンジのハイビスカスは
なんとも言えず美しかった
これ以上強い雨が当たると壊れてしまうような
儚さ
この暗闇に一目引く
水の玉の中に光る玉
ただその花を眺めていた
何をするでもなく。
傘をさすのが無粋に思え
傘を下ろして花を見つめる
なぜだろう
悲しくなってきた
いや、悲しみではない
感動だろう
心の動きは熱い水と共に表に出た
雨音が雑音を打ち消し
静かで澄んだ時間を作り出していた