114/235
台風の予風
ガジュマルの枝から見える空が白い
雲が上空を覆っている
降雨のあと 虫の声がより立って聞こえる
雲ひとつない晴天には漂っている
空気中の粉塵が
雨で鎮められた
視界良好 澄んだ少し肌寒い木の根の傍
岩肌、木肌は濡れたことで艶光り
いつもと同じ公園が
いつもと違う公園になる
カラスの鳴き声と髪掻き乱す風が
呼び起こす 不安 不穏 暗鬱
遊歩道を俯いて歩く青年が
厭世的な顔つきに見えるほどには
きらきらしい輝きとは隔たった世界
黒光り
葉が悉く暗闇のビリヤード台色
トンボがいなくなった
あぁ、どうやら台風がくるようだ