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天気雨
虹が出ていたそうな
天気雨
まだ赤くなる前の
黄色い夕日が雨によって
この街を輝く暖かな黄色に染めた
1メートル先も見通せない激しい雨
皆それよりも
このどうしようもなく美しい世界にうっとりしていた
恵みの雨とは天気雨のことを言っていたのかもしれない
ふと、影の方に視線を動かすと
どーっ
轟音が耳に迫ってきた
3階建てのコンクリートの建物に日を遮られた場所は
無声映画の世界
黒と白のグラデーションでものを映し出す芸術
音は雨が地面を打つ音
目線を90度動かしただけで二つの世界を行き来する
日光が音を吸っているのか日向の方は
柔らかい儚げな音に思える
首を左を動かすと景色と音と心が変わる
どちらも好きだ
そして、どちらもたまらなく美しい世界