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2 自己紹介タイムってなんかくすぐったいよな!

 翌日義妹が家にやって来た。おれとしては正直義理の妹は歓迎したくなかったんだが、おれの継母も一緒だってんなら話は変わる。


「まぁまぁなんてかっこいい男なのかしら! 結婚したいわ!」


 これ……おれに対して言ってきてんだぜ? 継母がだぜ? 同居初日でこんなんでどうすんだよと思い切り突っ込みたくなるが、継母はクククと笑って「冗談よ。さぁおうちに上がるわね!」と元気よく腕を振って我が家に入っていった。この人に遠慮という文字はないのだろうか。親父もしかして騙されてないか? モテるのはわかるけど、変な女に引っかかっちまったんじゃねぇだろうな。いや継母にそれ言うのは失礼だろうとか思われるかも知んねーけど、正直この継母めちゃくちゃ変人じゃね?


「お邪魔するよ! わー、春斗くんの家広いねー! お好み焼き屋だー! ソースの匂いがするねー!」


 子どものようにはしゃぐ義理の妹――秋元ちあき。本当に子どもみたいな見た目してやがる。小学生かこいつは。それでいて茶髪ロングのギャルってんだから、世の中よく分かんねーな。まぁでも最近の小学生って、けっこうケバケバしい女の子いるような気もするけど。


 とにかくだ。閑話休題。義理の家族となった秋元さんたちは、一応は秋元姓を名乗ることにしたらしい。名字が変わると不便だからな。知り合いとか多い人とかになってくると、「あれ、名字変わったの!? なに再婚!?」とかよけいな勘ぐりをされるからな。まぁその辺の事情は察せられるぜ。おれだってもう中学生だからな。ためになったね!


「見てみて春斗くん! こんなところに埃が落ちてるよ!」

「店のアラ探してんじゃねぇよ! もうちょっと落ち着きをもて! ったくよ~~~~、なんだってこいつの兄にならなくちゃならねーんだよ! うるせえ娘ができるとこんな気分なのかねぇ」


 おれはため息つきつきそんなことを考える。面倒くさいことこの上ない。見た目はたしかに可愛いのだが、なんつーか幼いという方面でのかわいさだ。決して異性として見れそうに………………いやまぁ、異性として見れないこともねーな。……可愛い。


 秋元ちあきは楽しそうに鉄板つきの机の下を眺めてたりする。制服姿だった。こちらにお尻を突き出してなにかを探している。パンツ丸見えじゃねぇか。ザ、ピンクである。そういうところまで子どもなのなお前。


「春斗く~~~ん! えっちな本見あたらないよ~~!」

「あるわけねーだろこんなとこに。あったらこの店潰れちまうだろうが」

「あ! ねぇねぇ春斗くん! ところでヤマタノオロチって漢字でどう書くんだっけ!? 私忘れちゃったよ! 教えてよ!」

「教えるかアホ! 知らんわそんなモン! 辞書で引いて調べろ!」

「春斗くんは好きな芸能人とかいるの!?」

「落ち着け……! 質問したがるのはわかっけど、せめて部屋に荷物置いてからにしろ。な? ここで話されると正直迷惑なんだよ」

「春斗くん将棋! 将棋興味ある!? 私打ちたいな! ね! 早く打ちたい! こう! こうこうこうこうこう!」

「いきなりパロった! お前もしかしてラノベ読んでんの!? ビックリしたぁ! 衝撃過ぎてうっかりサイヤ人になるとこだった! お前もしかしてラノベとか読むタチなの!?」

「えへへ~、もしかして春斗くんもラノベ好きなの?」


「あ、当たり前じゃねぇか! おれは本物が欲しくてたまんねーんだよ!」

「お! 春斗くんいーね! 私もちょうど本物が欲しかったところなんだ!」

「やめようぜ! なんかこの会話雲行きが怪しくなってきた! へー、でもそうか~、お前ラノベ読むタイプの女子だったんだな! 何か意外だった!」

「うん! 私読むのも書くのも好きだよ! ほら見て原稿! 後で春斗くんも読んでよ!」

「マジでええええええええ!? お前すげーな! 自分で小説書いてる奴おれ初めて出会ったわ! 読ませて! 面白いか面白くないかはさておいて、読ませてくれ!」

「は、春斗く~~~ん」

「ん、なんだよ。どうしたんだそんな上目遣いして」


「は、初めてだからね! 春斗くんに恥ずかしいところ見られるの初めてだからね!」

「雑! そのセリフを吐くのにはちょっと会話の流れがおかしいから! あれだろ? え、えっちするのは初めてだから優しくしてね、って言う方向の会話に見せかけて、実は小説のことでした~、ってオチだろ!? 雑すぎる!」

「ざっ、雑じゃないモン! ふええええええ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ん! お兄ちゃんがいじめるよ~~~~~~~~う!」

「おい! ダメじゃないか息子よ! 女の子を泣かすような男は、男とはよべんぞ!」

「るっっせえええええええええええわ! べつに泣かせたわけじゃねぇ! こいつが勝手に泣いたんだ!」

「なにを小学生みたいなことを言うちょるかこのばかたれめ! お前が吐いたセリフで泣かせたんだろうが! じゃからお前が悪い! さぁ謝れ! あ、や、ま、れ! ほらあーやーまーれー!」

「子どもかあんたは! お、おれが悪いのか……? 悪かったよ。すまんこの通りだ!」


「春斗くんが謝った! すご~~~い! 春斗くん謝るとそんな顔するんだね! なんか感激したよ!」

「こいつサイコパスか!? 感情の切り替えおかしくない!? アンドロイドかお前!?」

「春斗くん召使いさんはいるの?」

「いねーよ! お前お好み焼き屋をなんだと思ってやがる! お好み焼き屋と召使いはもはや対義語だわ!」

「春斗くんパリーグとセリーグどっちが好きかな? 私はね! 原監督がいるからセリーグ!」

「原監督推し! お前原監督推しなの!? わかるけど! 気持ちはわかるけど! こんな小さな子が大きな声で言うことなのだろうか!? 原監督が好きなんだなそうなんだな! 人の好みはそれぞれだもんな!」

「春斗くんそろそろご飯にしよっか! 喋りつかれちゃっただろうから、ね? ささ、そこに座って待っててね!」

「主導権握られてた!? おれいつの間にか主導権握られてたの!? ごめん! ここついさっきまでおれの家と認識してたんだけど、実は違ったの!? お前なれなれしすぎない!? って言うかお義母さん料理してる! キャベツ切るのうますぎる! アンタ何者なの!? って言うか切りすぎだから! お義母さんストップ! そんなにキャベツいらないから! つうか親父見てんなら止めろよ! なに新しくできた嫁さんの横顔に見とれてんだよ! だぁああああああああもう! なんだこのうちは!」


 おれの絶叫が虚しく響き渡った。………………本当にこいつら大丈夫かよ…………。




「うおわ! 春斗くんすごいいっぱいラノベ持ってるんだね! ねーねー! これ借りてもいい!? ああ! これも借りたいな! へへ~、春斗くんのお部屋って宝の島みたいだね!」

「うわぁ、るっせぇのが入ってきた……」


 おれは激しく落胆する。これあれだな、のちのち借りて返して貰えない奴だろう。しかし止めてもむだだ。この義妹は容赦なくおれの部屋の本棚から気に入ったラノベやら漫画やらを早速床に積んでいる。こいつ自由すぎねーか? おれ本当にこいつとやっていけるのだろうか……。義理の妹と言うよりもペットと呼んだ方がいいかもしれない。おれのペットがこんなに可愛いわけがない! うん売れそうにないな!


「お前よぉ、人のものなんだぜ? せめて礼くらい言ったらどうだ?」

「うん! 春斗くんありがと!」


 にこぱぁ、と晴れやかな笑顔を浮かべる茶髪ギャル。ちょうかわいい! 許す! 許しちゃう! おれはこの女の子が俺の義妹でよかったなと実感した。あれおれチョロスギね!? ケド可愛い子はどうしても甘く見ちゃうおれなのでした!


「そーいやお前、小説書いてるんだってな。見せろよ」

「え~、やだよ! わ、私だって心の準備があるモン!」

「いいから見せやがれ! おれは気になってしょうがねぇんだ!」


 何とも我ながらわがままだと思う。ケド気になるよな。自分の身の周りの人が書いた小説ってどんなものか気になっちまうよな。正直面白くなかったとしても、その人が自分で一生懸命書いたものだ、バカにしたくはない。おれは基本的にクリエイターの味方でありてーんだよ。何様のつもりだって言われるかも知んねーけど、正直小説書いてる奴ってすごいと思うぜ。


「う~~~、わかったよしょうがないなぁ。ちょ、ちょっとだけだからね! 先っぽだけだからね!」

「言い方が間違っている! お前の先っぽなんぞ興味ねーわ! とっとと見せてくれ。おれはじれったくて今すぐにでも地球外生命体にアクセスしてしまいそうだぜ!」

「うわなにそれ! 春斗くんアンドロイドなの!? もしかして地球にいるめっちゃ稀少な人間を監視するために派遣された的な奴!? うわあああああああああああああ! すごい! 春斗くんすごいね! 私春斗くんの妹でよかった!」

「理由! クソみたいな理由! おれは人間だ! 決してお前が思っているような代物じゃねぇよ! 悪かったな! お前おれが冗談言った途端にすぐ拾うのな! 拾ったはいいけどお前のセリフがいちいちなげーんだわ! えーっと、なんだったか、あ、そうそう、お前の書いた小説をおれに見せてくれるって話だったよな! うわ見てぇ! 超みてぇぜ!」

「うん待っててね! 今私の部屋からとってくるよ!」


 おれはドキドキわくわくしながら義妹の背中を見送った。あ、えーっとあいつの名前なんだったっけ? あそうそう。秋元ちあきって言う名前だったか。すげぇ。名前に「あき」って二つも入ってる! あき竹城さんは一つしか入ってないって言うのに! ってことはあれじゃね? あいつあき竹城よりももしかしてすごいんじゃ……(そんなことはありません)。


 おれはよくわからない思考に入ってしまったのを頭を振って弾き飛ばす。いかんいかん。なにわけわかんないこと考えてんだおれは! ケドちあきの小説が気になって仕方ない。って言うかちあきって読んでいいのか? おれなんかが? おれみたいな厨二病真っ盛りの中学二年生が、女の子のことを下の名前で呼んでいいのだろうか。うんいいよね! 世の中にそんなルールは存在しねぇんだ!


「お待たせ~~~~! へへ、遅くなっちゃったね! はいこれ!」

「ぶあつ! お前これ何ページあんだよ!」

「七百三十一ページだよ!」

「多い! 京極夏彦かお前! ってことはあれか、ネット用に書き上げたとか、それとも趣味で書いたとかそういうタイプか?」

「ううん違うよ! 要項オーバーしてもちゃんと選考する人読んでるかどうかチェックするの!」

「通らねぇよ! お前なんでそれで通ると思ってんだ! いらん! ふつうに要項に収めろ! じゃないと一生ワナビだぞ!」

「春斗くん……。現実をつきつけないで欲しかったよ……!」

「わ、わりぃ! ケド要項は守ろうぜ! じゃないとお前これ一次で落とされるぞ!」

「へへ! 九百ページの原稿でラノベの最終選考まで残ったことあるよ!」

「どこの賞だ! 出版社! 出版社をいえ!」


「ところで春斗くん、読んでくれないのかな!? 私ドキドキしちゃって今夜はぐっすり眠れそうだよ!」

「サンドウィッチマンかお前! 夜眠れるんだったらいいじゃねぇかよ……。つうか寝てくれ。たのむからねてくれ! お前なんて起きてたら近所迷惑極まりねーんだよ! 特にお隣の部屋にすんでいる天使のような俺様が!」

「春斗くんはどう見ても天使じゃないよ……。堕天使だよ………………。春斗くんは見た目も育ちも性格も、なにをどう解釈しても天使にはなれないよ!」

「お願いだから笑顔で言わないで!? わかってる! 自分の顔の美醜については、自分が一番よく知ってるさ! ケド言わないで! おれそんな言われ方されたの初めてだから! 人生で一番バカにされた! おれこんな経験したことなかった! おっかなびっくり初体験だから!」

「春斗くん言ってる意味が分かんないよ……。いつ読んでくれるの?」

「お、おう……。悪かったな。そうだよな、おれが読みたいっつったんだもんな。よ、よーっし、読むぞぉ!」


 おれはじっくりと読むためにベッドに腰を据えた。えーっとなになに? ジャンルは王道な学園ラブコメだ。しかしファンタジー要素も入っているらしい。ファンタジー要素っつうかSFチックだな。筒井康隆氏の名作『時をかける少女』を彷彿とさせる……。おいなんだこれ……………………、案外ちゃんとしてやがる………………。ちあきのくせに………………! おれの義理の妹のくせに…………………………。




 時計の針は無情にも午前四時を指していた。おい! おいおいなんだこれ! めっちゃ感動作じゃねぇか! なにあの義妹! 天才じゃね!? 


「…………ん、春斗くん? へへ、インターネットは吸い付きがよくないっておばあちゃんが言ってたよぉ…………!」


 おれが読み終わったのを気配で感じ取ったらしいちあきは、眠そうな目をこすってこちらを見上げてきた。正直起きかけのセリフは意味がわかんなかったが、おれは激しく動揺してしまっていた。こ、こいつ………………、シリーズ累計で七千万部くらい狙えんぞ!


「ど、どうだったかな!? 春斗くん面白かった?」

「あぁめっちゃ面白かったぜ! お前の小説! 胸が震えた! 特に最後の観覧車の中で別れを告げるシーンなんて感動しすぎて涙が涸れるくらいだった! お前情景と心情描写うますぎんだろ! 天才だ! 北別府や王貞治並みの天才をここに見たぞ!」

「春斗くんふざけないで! それは野球選手だから! 私が目指してるのはライトノベル作家だから!」

「お、おう……。今のぼけたつもりだったんだが……。真面目にレポンスされるとちょっと落ち込むぞ……」

「でもそっかぁ! 春斗くんが喜んでくれてよかった! 私その小説書いたの春斗くんのためってのもあるんだよね! 書いたんだよ! どう? よくできてたでしょ?」

「おれのため? おい冗談はよしてくれ」

「本当だよ! 義理のお兄さんができるって聞いて、私一生懸命その人に喜んで貰えるよう二って書いたんだよ! 春斗くんが結果的に喜んでくれて、私超嬉しいよ! もう天にものぼる気持ちだね!」


「暴走しすぎだ! お前は澤村拓一のストレートか!? 落ち着け!? わかった! お前が天才な事は認めてやる! これ出版社に送るんじゃなくて、ちゃんとネットに上げろ? そうしたらきっと読者がついてくるはずだから!」

「え~~。そんなのいらないよぉ。春斗くんが喜んでくれたらすごい嬉しいのに、うわ、春斗くんってそうやって何でもかんでもビジネスに結びつける人だったんだ! 私失望したよ! 君には失望したよ! アァもう本当に腹立ってきたよ! 本当にむかつく! むかつくむかつくむかつく! 信じられないよね! 春斗くんのばか! ばーかばーか! おたんこなす! もう知らないから! 春斗くんなんて大嫌い!」

「え、…………あ、ちょっ…………! ばかっ!」


 おれは油断していた。まさか義妹がそんな行動に出るとは思ってなかったからである。ちあきは一瞬のすきにおれの手から原稿をひったくると、なんとビリビリに引き裂き始めたではないか! お、お前なにしてやがる……!


「私が敬愛している大先生が言ってたよ! 曰く商業主義に走りすぎた作品には作者の魂は宿らないって! 最低! もう本当に春斗くん嫌い!」

「待て! まてまてまて! お前今なにした!? 破いちゃいけないもの破いたよなぁ……!? どうすんだその原稿! 印刷するのにすごい時間掛かったんじゃねーの!?」

「私のパソコンからすでにデータも消してあるよ!」

「なにしてんだてめ――ぇ! お前の敬愛するラノベ作家の名前がなんとなくわかったわ! 山田エ○フだろ! ダメだよ! お前なにしてんの!? あれはフィクションだから『あぁまぁそういうことする作家先生いるよね』みたいに思えるけど、お前がいる世界は現実だろうが! もったいねぇ――! お前どうすんだよ! あれ販売したら単巻で百万部は売れてたんじゃねーの!?」

「ふぇ――――――――!? 嘘!? 嘘でしょ!? ひゃ……百万部!? うわどうしよう春斗くん! データが! データが消えちゃったよ! 春斗くんに原稿渡したときに、『ファイル邪魔になるしデータ容量食べちゃうから消した方がいっかな、春斗くんに印刷したもの渡すんだし、いいよねてへ』とか考えてたさっきの私をぶん殴りたい! どどどどどうしよう春斗くん! 時間巻き戻してよ!」


「できるか! 後先考えねーお前が悪い! なにしてんだよ! お前これから両津勘吉って呼ぶぞ!」

「うわーん! 女の子にそれはあんまりだよぅ! 春斗くん復元! ほら復元! 去年の忘年会でやってたあれ見せてよ!」

「初対面だよ! 去年忘年会やってねぇよ! 復元のマジックもやってない! 勝手にねつ造すんじゃねーよ!」

「春斗くん………………ふぇ~~~~ん! 春斗く~~~~ん! おにいちゃ~~~~ん――――――!」

「都合のいいときだけお兄ちゃん扱いしてんじゃねぇよ! お前とおれはまだ他人の域だろうが!」

「お、お兄ちゃん、………………そういうこと言うんだねわかったもう絶交だね! せっかくスマホでラインの交換して上げようかとも思ったけどいらないってことだねそうなんだねわかったよソウカソウカ君はそういう奴だったんだね僕はとびっきり軽蔑するよじゃあね!」


「おいまてぇ! 色々と突っ込ませろ! お前の変わり身どうなっとん!? 怖い! 怖すぎる! なんかうちの妹サイコパスじゃない!? おれの妹サイコパスなの!? いやだ! 今までで一番見たくないラブコメ!」

「はっ――! 私は今なにを喋っていたのだろうか! ねぇ春斗くん? 私今なにか言ってなかったかな!?」

「まさかの二重人格ゥ! いいやまさかの二重人格ゥ! 東京ホテイソンかおれは! お前のデータが消し飛んで、お前がわけのわからないことを言いだし始めたんだよ! 世の中学生がみんな知ってるであろうエーミールっぽいセリフを吐いてな!」

「エーミール! うわ春斗くん懐かしいね! そっかぁ! 春斗くんはエーミールが好きなんだね!」

「そうでもない! そりゃあエーミール好きな人もいるだろうけど、おれは何とも思わない! 多分世の義務教育受けた子たち皆思ってる!」

「ところで春斗くん! 原稿の復元まだかな!?」

「おれは神さまか!? できるわけねーっつってんだろうが!」


「え~~、お兄ちゃんって役立たずなんだねそうなんだね本当に使えないね新しいお兄ちゃんに乗り換えちゃおっかな~そうしよっかな~ねぇどうしたらいいと思う藤崎くん?」

「誰!? 藤崎誰!? お前の中にいる友達なの!? もうそろそろお前ヤバい奴だってわかってきたわ! お前おれがあってきた仲で一番ヤバい奴だなって実感したわ! 藤崎ィ!? 藤崎って本当に誰⁉ 藤沢さんと川崎さんを足して二でで割った人とか!?」

「春斗くんなに言ってんのか全然わかんないよ……」

「お前のせいだ! なんでおれお前よりおかしい奴って認識されてんの!? え!? なに!? おれがおかしいの!? 悪い! 悪かった! そっか! そうなんだな! おれが悪かったんだなそうなんだな!」

「うん春斗くんが悪いね!」

「そうなのぉ――!?」


 おれたちが話し込んでいるうちに空はすでに明るくなっており、気づいたときには目覚まし時計が鳴り響いていた。


 なんてむだな一日だったんだろう………………。いや徹夜してるから二日と言うべきか。とにかく眠い。ちょー眠い。合わせてぴょこぴょこちょー眠い……。

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