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余談

「レッツお料理教室!」


 とてつもないかけ声が毎度のごとく我が家に響き渡った。ちあきが手にしているのはヘラだ。あのお好み焼きひっくり返す奴な。ちなみにこれホームセンターで買えるから、欲しい奴は好きなだけ買えばいい。そして家でこっそりホットプレートとか使ってお好み焼きひっくり返す練習すれば、いつか恋人とお好み焼き屋デート行ったときに尊敬されるぞ! お前らやってみろ! 努力は決してお前らを裏切らないからな!


「一応聞くが、なにをするつもりなんだ?」

「っへへへー、バレンタイン用のチョコレートを作るよ!」

「気がはぇえ! お前今何月だと思ってんだ! 四月! 一ヶ月半前だそのイベント!」

「はっ! うっかりしてた! じゃあハロウィン用だね!」

「ハロウィンもだいぶ後だ! ってかそれお前が作りたいだけなんじゃねーの?」

「当たり前だよ春斗くん! 世の中にいる女の子みんな男の子のためにチョコレートを作りたくてしょうがないんだからね! さぁレッツお料理!」


「ええい待て待て! お前今からなにをするつもりなのだぁ!? 場合によってはおれの権限で火止めるからな!」

「そ、そんな……ひどいよ春斗くん! 私春斗くんのためにチョコレート作って上げようって思ってるのに!」

「いや考えろ! お前鉄板でチョコ作る奴滅多にいねぇ――よ! いるとしたらロールアイスだ! ケドうちのは熱を通すの! わかるか!?」

「わかんない! 春斗くんがなに言ってるのかさっぱりわからないよ!」

「おれにはお前の思考の方がよっぽど分かんねぇよ! わかれよ! お前中学二年生だろ!」

「うぇーん、春斗くんがバカにしたー! ひどいよー!」

「春斗貴様! ちあきちゃんを泣かせるなとあれほど言っただろうに!」

「お前本当にろくな女に育たねーぞ! おれにはお前の将来が本気で心配だ……」

「大丈夫だよ春斗くん! 私モデルの仕事でめっちゃ儲かってるから!」

「くっ! この世で一番悔しいマウントだ! 特殊な仕事で稼いでる奴って偉いけど、偉いけど! 悔しい! おれにはなにも言い返せねぇのがまた悔しい!」

「っはっはーん! 春斗くんザまぁないね! そこにひざまずくといいよ! ほら! 畳にチュウすればいいんだよ! こうやって!」


「やめろ! お前がやってどうするんだよ! 何だこの生き物! おれはどう扱えばいいの!? 初めてだよ! おれ畳にキスしようとする女子中学生引き留めるの初めてだよ!」

「は、春斗くんの初めてなんだね! 私張り切ってしまうよ!」

「ざけんな! つ、つかれる……! なんだこいつ!」

「ふふ、春斗くん、さてはお腹が空いちゃったんだね!」

「お、おおう! お前まさかその鉄板でチョコレート作ってくれるって言うのか!? どうやって作るのか知らねーけど!」


「カップ麺食べよっか!」

「チョコは!? ねぇチョコはどこ行ったんだよてめぇ!」

「カップ麺の中に入ってるよ!」

「どこの会社だ! 訴えてやる! さぁ出てこい裁判だ!」

「春斗くん落ち着いてよ……。世の中のカップ麺にチョコレートは入ってないよさすがに冗談だよ……ねぇ春斗くん大丈夫?」

「てめぇぶっ飛ばすぞ! おれの渾身のノリツッコミ無視してんじゃねぇぞマジで! おれとんだ大恥じゃねぇか!」

「春斗くんのノリツッコミ……どう受け取ったらいいか私にはわからないから」

「そんなしんみり言われても困る! お前に綾波は向いてない! 綾波適性ゼロだお前! 強いて言うなら髪型はまだワンちゃん有るけど、それ以外は適性ねぇよ!」

「ところで春斗くんはマーブルチョコとチョコベビーだったらどっちが好き? さぁ答えてちょんまげ!」


「そ、そんなこといきなり言われてもな……。だいたいどっちもあんま食わねーしな。昔はよく食ってたけど、まぁ強いて言うならマーブルチョコかな。手につかねーし」

「ほうほう! じゃあ春斗くんのためにとっておきのチョコレートを用意したよ!」

「お、お前……!? まさかおれが欲しい物がわかるって言うのか!? 天才だなお前!」

「板チョコだよ!」

「クソ野郎! 嬉しいけどなんだったんだ今の質問! おれの期待返せよ! ドーパミンの浪費だわ!」

「そ、そんなに責めないでよ! 私だってこの板チョコ買うのに苦労したんだからね!」

「ほう、どんな苦労だよ。場合によっちゃ拷問だな」

「ひどい! 春斗くん最近乱暴だ! なんか扱いひどくなってない!?」

「ったりめーだ! お前がほら吹きまくるからだろうが!」

「私ほらなんて吹いたことないよ! 嘘ならついたことあるけど。でもそれも嘘だけどね! って言うのは戯れ言だよ!」


「わかんねぇよ! どんだけラノベ読んでても分かんねーギャグやめてくれ!」

「春斗くん板チョコ半分こしようか! へへ、私これ材料に使う気だったんだよね~~~」


 なるほど材料ね。あれか、もともと使う予定だったってことか。しかし半分こしちまったら意味ねぇんじゃねぇか、なんていうツッコミは無粋だろう。こいつの思考回路は全人類理解できない。近くにいるおれですら理解できないのだから。


「春斗くん見てみて! このチョコレート黒いよ! ブラックだよ!」

「喜ぶポイントがおかしいだろ。って言うかたいていのチョコレートなんて黒いんじゃねぇの?」

「違うよ! 春斗くんは知識不足だなぁ! 世の中には青いチョコレートとか、赤いチョコレートとかあるんだよ! ほら見てよ! マーブルチョコだよ!」

「やっぱあんじゃねぇか! どっちなんだよ! お前一応全部用意してたパターンかもしかして!?」

「よくわかったね春斗くん! これ昨日HUNTER×HUNTER読んで思いついたんだよ! ゴンがやってたんだ!」

「有名な奴! セドカン相手に披露した奴! ケドお前の目的は何だ! いらねーよそんな不自由な選択! 誰得!?」

「わっかんないかな~~春斗くんは! こんなものに意味なんてないんだよ!」

「意味? どういう意味だよ」


 おれは本気で疑問になっちまう。こいつの言いたいことがいまいちわからない。ちあきは一体全体おれになにをしたかったというのだろう。


 おれの目の前でちあきが腰に手を当ててふんぞり返る。まるで女教師である。こんなちっこい女教師だったらさぞなめられるだろうなとか思いつつ、おれはちあきを見守った。ちあきはもったいぶった様子で言った。



「こういうむだな語りこそが、掛け替えのないものなんだよ。だから春斗くんと無駄話しているっていうことそれ自体に、意味があるんだよ」



 なんかどこぞの生徒会長みたいなことを言い出した。おれは呆れてしまう。まぁこいつにはこいつなりの考え方があるんだろうが、とりあえず一つだけ言わせてもらうとしよう。



「もっと他にやりようがあんだろ…………」



 以上、おれたちのちょっとした日常編でした。


 ……いるのこれ?

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