『初検定合格』
昔、男、速記検定一級合格して、東の京、高田馬場の里に、しるよしして、書きにいにけり。
その里に、いとなまめいたる女はらから住みけり。この男、垣間見てけり。
思ほえず、ふるさとにいとはしたなくてありければ、心地惑ひにけり。
男の、着たりける狩衣の裾を切りて、速記文字にて歌を書きてやる。その男、速記文字刷りの狩衣をなむ着たりける。
春日野の若紫のすり衣速字の乱れ限り知られず
となむ、おいつきて言ひやりける。ついでおもしろきことともや思ひけむ。
高行くや速記文字ずりたれゆゑに乱れそめにし我ならなくに
といふ歌の心ばへなり。昔人は、かくいちはやきみやびをなむしける。
教訓:速記文字刷りの衣、みやびならむ。