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彼の家を後にしたあたしは、そのままあてもなく街を彷徨った。家に帰れば両親はこんな顔をしたあたしの事を慰めてくれるだろう……だけどそれが、そうされる事が許せなかった。
本当は普通に生きればいいんだってわかっている。物語の登場人物みたいに、人の死を受け入れて前を向いていくべきなのだと。きっと彼だってそれを望んでいる、だなんてどこかの受け売りの言葉を支えにして。
だけど、無理だった。
彼を殺した、あたしが彼の命を奪った……その事実が胸を締め付ける。それから、この街だって。
あの角を曲がった先にある本屋で、彼と試験前に参考書を選んだから。見上げた先のビルの四階にある雑貨屋で、新しいペンケースはどっちが良いかと二人で言い争ったから。すぐそこにあるゲームセンターで、クレーンゲームに夢中になって昼食代もつぎ込んで。そこの橋で彼を待ち伏せして、偶然だねって学校に行って。
そんな思い出の全部が、ちゃんとあたしを責めてくれる。彼だけがいなくなった、変わらない街が罪を突きつけてくれる。
お前のせいだと、お前が殺したんだと。
わかっている。だからあたしに必要なのは――罰だ。
気がつくとあたしの体は、街の境にある大きな川へと向かっていた。あの時は、確か中学三年生だったかな。受験前の思い出作りなんて言って、クラスの何人かと自転車でここまで来たんだっけ。冒険なんて言えるほど遠くもないくせに、おやつはいくらまでなんて張り切ってさ。
ふと、アスファルトに水滴が染み込んだ。見上げれば夕立がざぁっと降り始めていた。なんだかあまりにもタイミングが良いものだから、あたしは虚しく笑ってしまった。
そして、手すりを、飛び越えた。
真っ逆さまに落ちた体が水面に激突する。痛みはない、だけど衣服はすぐに汚れた川の水を吸い込み動きはすぐに重くなって。諦めたのが良かったのか、それとも悪かったのか。肺を水で満たしながら、あたしの意識は遠のいていく。
もし。
もしも、こんなあたしに祈ることを許されるなら。
何かを願うことを諦めなくてもいいのなら。
――もう一度彼に会いたい。
他に、何もいらない。何も――。
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