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SAVE.104:君との出会いを、君との日々を③

 目を覚まして真っ先に気付いたのは、鼻をくすぐる香ばしい匂いだった。日は沈み月は上り、辺りは焚き火と持ち込んだランタンの灯りが辺りを照らしていた。


「もうこんな時間か」


 立ち上がり焚き火の近くまで歩けば、既に全員席につき食事の一歩手前まで準備されていた。


「こんな時間まで惰眠を貪らせてくれた殿下に感謝する事ね」


 姉貴に嫌味を言われながらも、俺は黙って席につく。出された食事を受け取りながらも少しだけ居心地の悪さを感じていた。


「まぁまぁシャロン、いいじゃないか。彼には夜の見張りもあるのだから」


 殿下の出してくれた助け舟のおかげで、ようやく今日の食事に意識を向けられた。主食と汁物を兼ねたトマトのスープパスタに、持ち込んでおいた塩とハーブ漬けの鳥肉のステーキ、それからピクルスとハードチーズ。流石に重い荷物を運んだだけあって、晩飯は中々に豪勢だった。


「そうだアキト、食べたら水浴びでもして来たらどうだい?」


 黙々と食べ進めていると、クリスからそんな提案をされて驚く。


「え、水浴び?」


 思わず食器を持つ手が止まる。水浴び――これはあれか、いわゆるゲームのイベント回収っていう奴か。


「汗も流せて気持ち良かったよ? 近くの川でみんな交代で入ってきたんだ」

「あ、そうですか……」


 ……なんて考えはすぐに消え去る。わかっていた、そんな美味しい思いが出来るなら始めから重い荷物を運ばされてなんかいないって。


「そうそう、アキト君はクリスと一緒のテントになったからね」

「え?」


 だがゲームの水浴びイベントなんかよりも衝撃的なイベントの発生を突如告げられる。いや本当に突然で、何決まりましたって顔してるんだこの人は。


「そこにテントが二つあるよね」

「ありますね」


 二人用の軍幕が二つ、少し離れた所に並んでいる。


「あっちが僕とシャロンのテントで、そっちが君とクリスのテント」


 あっちとそっちに規格の違いは全く無いが、言いたいことはそれじゃない。


「あの、殿下」

「なんだい?」

「いや……おかしくないですか?」


 笑顔で聞き返す殿下に、俺は直球の疑問をぶつける。普通こういう時は性別で分けるのが一般的ではないだろうか、という至極当然の事を問い質したいのだ。


「おかしくないだろう、僕はシャロンの婚約者なんだから」


 いやそうだけど、未婚の男女が一晩テントで過ごすというのはどう考えてもおかしいだろう、と言いたい。言いたいが伝わらない。姉貴は、駄目だ表情は平静を装っているものの顔をトマトより赤くして機械的に食事を摂っている。これもう完全に喜んでいるだろ。


「いや、姉貴とクリスとか……」

「クリスは男だろう?」


 それはまぁ、一応はそういう事になってるけども。


「夜の見張りは僕達三人で回すからね。僕、アキト君、クリスの順番で良いかな?」

「それは構いませんが……」


 そこに異論は無いのだが、思い切り話を逸らされてしまった感が否めない。なので俺としては最後に、小声で言いたいことだけ言い残すことにした。


「……手は出さないで下さいよ」


 もっともその言葉についてだけは、誰もが聞こえないふりをしていたのだが。

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