第9話 別邸
「私の息子を返して!」
「怖い!赤い目の魔女が怖い!!」
母親は日増しにユーリに対してひどく当たるようになり、
ユーリを見ると正気を失い大声で叫び出すので、それにつられるように周りの使用人もユーリのことを恐れるようになった。
さらに悪いことに、重症だった弟が意識を取り戻したが、事故の後遺症で歩くことができなくなっていた。
両親はいっそう、ユーリへの警戒を強め、父親は遠ざけるようにユーリを別邸に移した。
なぜ別邸に追いやられたのか誰も教えてはくれなかったが、
『自分のせいで兄は死んで、弟は歩けなくなった。そして両親は私を憎んでいる』
ユーリがそう理解するのは難しいことではなかった。
自分は本当に炎の魔力があるのか?
兄が亡くなり、弟が歩けなくなったあの火事をおこしたのは自分なのか?
ユーリには、何ひとつわからなかったが、少なくとも両親がそう思っているのは間違いないと感じた。
しだいに、ユーリ自身も自分の存在が怖くなり、両親と弟への罪悪感から生きていることが辛く感じるようになった。
しかしアルフレッドは事件前と変わらず、ユーリを慕い涙ながらに姉を説得した。
「姉様のせいじゃないよ」
「しかたないことだったんだ」
「姉様がいないと僕は生きていけない。一人にしないで・・・」
弟に優しい言葉をかけられるたびにユーリは余計罪悪感に襲われるのだが、弟の気持ちを裏切ることはできなかった。
弟は両親の監視の目をかいくぐりユーリのいる別邸によく訪れた。
邸宅からかなり離れた別邸は手入れもされておらず、ボロボロの状態、使用人は年老いた夫婦2人だけだった。
「僕がもっとお金を渡せたらよかったんだけど、父様も母様も許してくれなくて…姉様ごめんよ」
弟が毎月、何とかお金を工面してくれたが、最低限の生活費、使用人の老夫婦に給金を払うとほとんどなくなってしまい、公女とは思えない質素な暮らしを余儀なくされた。
しかし、そんな暮らしより、両親に憎しみの対象として見られていることがユーリにはつらかった。