第4話 皇帝
「ちょちょちょっと!イザベラ!」
ケビンがあわててイザベラを止める。
イザベラの剣が首筋にあたっても、ヴォイドはピクリとも動かない。
そしてゆっくりと顔を上げその琥珀色の瞳でまっすぐにユーリを見つめた。
「ユーリ様…どうか、私に忠誠を誓わせて下さい」
ヴォイドの瞳があまりにも美しかったからか、ユーリは不思議と強く惹きつけられた。
ガヤガヤと騒ぐ周りの者も、今にもヴォイドの首を刎ねてしまいそうなイザベラも、全てが遠い世界のように、まるで時間がとまってしまったかのようだった。
「これこれ、ヴォイド新隊長。ユーリ騎士が固まっているではないか」
騒がしいホールに一人の男の声が響く。
ユーリが一瞬で我に帰り、振り返ると、そこにはこの国の皇帝アイザックが立っていた。
「…はっ!」
その場にいる皆が一斉に敬礼をする。
「帝国の太陽にご挨拶申し上げます」
皇帝アイザックは左手で敬礼を解くように挨拶を返す。
「ユーリ騎士、隣国遠征ご苦労であった。隣国アルバの大使から活躍の報告を受けておるぞ」
皇帝はどこかふくみのある笑顔で微笑む。
「無事戻りました」
皇帝アイザックはユーリの聖騎士団での活躍そのものは重宝していたが、誰にもなびかず可愛げのないところが面白くなかった。
さらに国民からの人気には王家として危機感を感じている。
なので今回の隣国遠征は、きこえはいいが、国内でユーリの人気が高くなりすぎたためにしばらく国外に出したというのが実際のところだった。
「それと討伐隊長の件だが、今年度はそこにいるヴォイド騎士を任命することになった」
「・・・そのようですね」
「納得がいかないかもしれないが、ユーリ騎士が生還する保証も無かったものでな」
まるでユーリが生きて戻ってきたことが予定外のように皇帝は言った。
「・・・隣国では貴重な経験をさせてもらいました」
嫌味は受け流すのが一番だ、とユーリはすでに経験から学んでいる。
「それはそうと、ヴォイド騎士は若くてもなかなかの実力の持ち主だぞ」
皇帝は水の入ったグラスを手にし、なにやらヴォイドに目配せをする。
「ヴォイド騎士、そなたの魔力を見せてみよ」
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