表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

165/179

【永禄十四年(1571年)冬~初夏】 


【永禄十四年(1571年)正月】


 年末年始で多くの勢力の当主、有力者らが集まると、足利義昭の反信長活動の件が話題になった。決起を求める手紙が多くの領主のところに届いているのだった。


 織田の反撃は続いており、三好三人衆は摂津から追い払われ、六角氏は甲賀に再び逃げ込むも、ほぼ崩壊状態であるようだ。


 本願寺は大坂本願寺……、元時代で言うところの石山本願寺となる拠点を構えて、反信長の姿勢を明らかにしている。大和では、三好義継、松永久秀が健在だった。


 そして、信長は越前の朝倉氏を攻める準備を進めているようだ。軍神殿としては、朝倉氏との関係は良好だったため、やや複雑そうではあるが、間に越中、加賀があるために手出しをするつもりはないようだ。越中でも一向一揆が活発化しているとのことで、その対応に手を取られてたまらぬ、と苦い顔だった。


 比叡山延暦寺に対するのと比べれば、本願寺との戦さは特に抵抗はないようだ。一向一揆は各地で猛威を奮っており、多くの勢力が手を焼いているので、戦っても特に違和感がないためか。むしろ、狂信者として徹底的に討伐されている気配すらある。この時代の宗教観はよくわからない。


 ただ、現状での信長の本願寺対応は、攻囲までに留まっているようだ。史実のような奇襲的な参戦でなかったのも、影響しているのかもしれない。




【永禄十四年(1571年)四月】


 信長は越前攻略に向かった。一方で、京に駐在していた楠木信陸は、森長可もりながよしに後事を託して伊勢攻略に回ったようだ。


 これまでの伊勢は、織田による侵攻を受け、北畠やその他の伊勢の名家が信長の血族を送り込まれた形でひとまず安定していた。だが、長島一向一揆の活性化によって、状況は一変したのだった。


 その勢いには、陸遜も手を焼いているらしい。まあ、正直なところ、俺も一向一揆の相手はしたくない。この点については、出現したのが関東で本当によかった。


 坂東に本願寺勢力がほとんどいないのは、おそらく遠くて貧しい土地だったからなのだろう。逆に畿内で北陸や東海ほどの圧倒的な威力でないのは、住民の宗教への距離感からか。


 その本願寺、大和勢を除いて、近畿の反信長勢力がほぼ鎮圧されてしまったため、足利義昭が遠方への策動を本格化させているのだろう。東国の状況は、新田から織田方へとそれとなく伝えておいた。






【永禄十四年(1571年)五月】


 手紙攻勢の件で、信長が足利義昭を詰問したらしい。まあ、そうなるか。


 ただ、その反応は激しいもので、義昭自身が反信長で挙兵をしたのだった。なにやら展開が激しい気がする。


 この世界には、突貫工事で築かれた二条城……、いや、二条御所は存在していない。義昭が籠もったのは、幕臣・槇島昭光の居城である槇島城だった。


 京周辺にも、香取海と同様にやがて姿を消してしまうはずの湖沼が存在する。槇島城は、その一つである巨椋池に浮かぶ島にある水城である。


 ただ……、結局のところ、この頃の足利将軍とは、独自の武力はほとんど持たない、推戴されていた権威の名残に過ぎないのだろう。それを自覚して動けば、まだやりようはありそうだったのに。


 結果として、至極あっさりと攻略され、降伏した義昭は放逐される形となったようだ。淡路島方面へ逃れたと言うから、三好三人衆を頼るつもりなんだろうか。


 史実で追放された際には鞆に向かって、幕臣もある程度ついていき、鞆幕府とも呼ばれる状態が生じたはずだが、二年ほど展開が早まっている。そのためか、本格的な大坂本願寺攻めが始まっておらず、毛利が参画していない影響が大きそうだ。




【永禄十四年(1571年)六月】


 足利義昭が淡路島で家督を譲った、との話が伝わってきた。息子はまだいないはずなので、一族の者に対してだろうか。いまいちよくわからない。


 史実での足利義昭は、京を追われた後も鞆で将軍として活動していたのだが、歴史的にはその流れはほぼ黙殺されていた。一方で、息子や一族の別系統の者への継位を目指さず、自分の代で室町幕府に完全に幕を下ろす形となった。


 その義昭が、この段階で家督相続というのは、ずれ過ぎなようにも思えるが……。


 織田家は、越前の朝倉義景、河内、大和の三好義継、松永久秀を破って、畿内をほぼ制圧した状態となった。摂津から播磨方面にも進出しているそうだが、義昭放逐が早まったことがどう影響するだろうか。


 現状の織田勢は、大坂本願寺、それに越中、伊勢長島の一向一揆勢と睨み合う形となっている。信長包囲網がいったん解消された形となるので、一気に討滅してしまう可能性も考えられた。



次回以降、区切りの都合で短めの回が多くなります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【スピンオフ作品】
「新婚剣術少女の永禄上洛行 ~新陰流一門の戦国旅紀行~」
時期的には、第二部途中のお話となります。ネタバレの関係で、第二部終了後にお読みいただけるとうれしいです。

【イメージイラスト】
mobgouzokupromo.jpg
山香ひさし先生にイラストを描いていただきました。


【主要登場人物紹介】
<【永禄三年(1560年)八月末】第一部終了/第二部開始時点>


ランキングに参加中です。
【小説家になろう 勝手にランキング】


【第一部周辺地図、ざっくり版となっております】

モブ豪族初期周辺地図
国土地理院Webサイト掲載の地図を利用させていただき、加工(トリミング、イラスト、文字載せ)は当方で行っております。
※現代の地形であるため、ダムによる人造湖、河川の氾濫による流域変化、用水路などなどが作中と異なるのはご留意ください。すみません、そこは作者も把握できておりません。


【第一部の舞台外側の有力勢力の配置地図、ざっくり版となっております】

モブ豪族第一部舞台外地図
国土地理院Webサイト掲載の地図を利用させていただき、加工(トリミング、イラスト、文字載せ)は当方で行っております。
※現代の地形であるため、ダムによる人造湖、河川の氾濫による流域変化、用水路などなどが作中と異なるのはご留意ください。すみません、そこは作者も把握できておりません。また、東京湾の埋め立てが進んでいるので、雰囲気として感じていただければ幸いです。>
香取海は、霞ヶ浦周辺の青くなっている辺りまでが湖だった、くらいの感覚で捉えてください。>







【三毛猫書房 友野ハチ作品(電子書籍@Amazon)】
sengoku.jpg

この作品の電子書籍版を含めた友野ハチのインディーズ形式での電子書籍が、アマゾンにて販売中です。
「月降る世界の救いかた」「転生魔王渡世録」「戦国統一オフライン」「時限式平成転生」の各シリーズ全作品が「Kindle Unlimited」対象ですので、ご利用の方はいつでも追加費用無しでお読みになれます。

    【Youtube「戦国統一オフライン」紹介動画】
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ