【プロローグ】
当作品は完結しております。……なのですが、作者の技量、構想力の拙さから、多くの方から終盤に難ありとのご評価を多くいただく状態となりました。
具体的には最後の第五部が、となりそうでして、いただいたご意見を参考に、改稿版をお届けすることに致しました。
終盤の盛り上げを目指した要素や、無理なテンポアップに加え、内容自体の話に加え、事象の捉え方の誤りによるテーマのぶれ、キャラ造形の問題なども重なりまして……。
一方で、一度公開したわけですし、また、現状を気に入っていただいている方もいらっしゃらないわけではないことから、現行の第五部も残しておこうと考えております。
改稿版は、同時に改題を行いまして、「戦国統一・オフライン」としてお届けしています。
https://ncode.syosetu.com/n7175ih/
なので、これから読まれる方は、すみません、改稿版の方をご覧いただけると助かります。
冒頭に不穏な告知で申し訳ないのですが、途中まで読んでいただいてからよりは、との意図からのご案内となります。
【プロローグ】
オンラインゲーム大会を、出場者が同じ場所に集まってやる意味がどこにあるのか。
これが、コンマ以下のタイミングを争うゲームであれば、まだわからなくもない。だが、リアルタイムとは言っても戦略シミュレーションゲームであるのに。
そう思ってしまうのは、俺が本質的に出不精であるからなのは間違いなかった。そして、実際のところは、アクションやらシューティングやらの部門と同時開催であるため、そちらに引っ張られてしまっているのだろう。
本来なら、オンライン戦略SLGがメジャーなゲーム大会の対象タイトルに選ばれるなんて事態は、ほぼありえない。運営の気まぐれか、スポンサーの意向なのか。
今回、取り上げられたゲームは、「戦国統一オンライン」である。メジャーな「織田家の野望」がエンタメ寄りだとすれば、無骨で簡素なシリーズとして知られている。それだけに、複数プレイには適しているのだろう。
実際、いまいち商売っ気が薄い制作会社が無関心なのをいいことに、有志による野良大会が開催されていて、常連が腕を競い合っている状態だった。担当する勢力による有利不利が著しいので、大会一回ごとに優劣を競うと言うよりは、年間の総合順位が重視されている。
野良大会の主催者の方針によって、完全ランダムで織田家とモブ豪族が同列に扱われる場合もあれば、選定された大名家を順番に担当して総合順位を競う方式もある。選定対象も、有力大名家のみのケースも、弱小大名限定の無理ゲー気味な大会もある。
実際には、有力大名プレイと、弱小大名やモブ豪族を操るのでは別のゲームかというくらいに適性が分かれる。そのため、大会によって上位陣が大きく様変わりするのが普通である。そんな中でも、オールラウンダーと言えそうな面々はいた。
威張るわけではないが俺もその一員であり、今回のメジャー大会に招待される運びとなったのだ。
ただ……、賞金も出るからと、個人情報を提出させられたのだが、振り分けられたのはジュニア部門だった。オンラインゲームで年齢による優劣があるのか、それこそ運営を問い詰めたいところである。
そう感じたのは俺だけではなかったらしく、実際に運営にクレームが入ったそうだ。ただ、それを受けてか早めに発表されたメンバーを見て、矛は収められた。上位常連が揃っていたためである。
陸遜、双樹、ソントウ、そして俺、震電の四人で四試合。これはもう、楽しみでしかない。
一般部門のメンバーも、もちろん歯応えはありそうなメンバーが含まれるのだが、玉石混交というところだった。そちらに交じるよりは、粒揃いの四人が集うジュニア部門でよかったと心から思う。他の三人も、そう感じているだろうか。
夏の陽射しが降り注ぐ会場への道には、アクションバトルゲームのプロチームのロゴ入りTシャツを着たカップルの姿が見られた。やはり、短時間の対戦ゲームこそが、大会の華なのだろう。十数時間かけてじっくりと戦い、場合によっては選手ではないAI操作大名が天下統一することすらある「戦国統一オンライン」は、観戦して楽しめるかどうかは、微妙なところだった。
選手目線で言えば、滅亡しそうになったところからどれだけ悪あがきができるか、あるいは、どうやってAI大名を他のプレイヤーに襲いかからせるかなどなど、見るべきポイントは山のように存在している。
今回の盛り上がり度合いで、戦略SLGのゲーム大会での扱いの今後は変わってくるかもしれない。そう考えれば、映え具合を考えて、次につながるような派手なプレイを心がけるべきなのかもしれない。けれど……。
設定されたのが、全力を尽くさなくては失礼に思える好カードなのだから、困ってしまう。ここはやはり勝負に徹して、世の評価を問うべきなのだろう。
他の三人についてはプレイスタイルこそ熟知しているが、素性はまったく把握できていない。彼らが同年代かそれ以下だというのも、初めて知った状態だった。
大会はライブ中継されるが、戦略SLG・ジュニア部門については後ろ姿までとの話になっている。まあ、アイドル的な存在も多く、プロも参加するメジャー分野とは話が違う、との切り分けなのだろう。実際、賞金額も桁が違うのだが、正直な話として設定されているだけでもびっくりな状況だった。
中継での顔出しは行われないにせよ、おそらく選手同士は対面する場合もあるだろう。対戦相手がどんな三人なのかは、正直なところ興味があった。
受付を済ませ、闘技場へと向かう。控室がないのはご愛嬌だが、プレイエリアで軽食も可能だそうだから、問題はなにもない。
扉を開くと、照明が向けられていたのか、俺の視界が真っ白になった。