♯5 龍の心
日の国…江戸時代の日本によく似ている国、王宮の牢屋から転移してきたライト達はある場所へ向かっていた
「ねぇねぇ、もうひとつの故郷ってどういうこと?」
「両親が殺された次の日に人攫いにあったんだ、別の国に売り飛ばされそうになったんだが日の国の人達に助けられて学園に入学するまでこの国で育てられたんだ」
日の国の人達はすごく正義感が強い、人を苦しめる酷い人間には容赦なく刃を向け命すら奪う
「もう大丈夫だから歩くよ、ありがとなファルフ…うっ…」
「大丈夫、傷はある程度塞がったのになんで…」
「…秀明に撃たれた銃弾のせいか」
回復魔法は傷を治すことはできるが体内の異物を取り除くことはできない、銃弾はライトの体を貫通せず体内に残ってしまったため取り除かない限り苦しみ続けることになる
「回復できないなんて…どうすれば」
「あれ?あんたらこの国の人じゃないな?…ってライト?ライトじゃねえか」
偶然通りかかった人に声をかけられる、その人はライトの育った屋敷の使用人だそうで詳しい話をしたら急いで屋敷にライトを運び医者を呼んでくれた、医者は手際良く準備をし銃弾摘出手術を始めた、麻酔がないためロールの魔法で一時的にライトの意識を眠らせた、そして2時間後手術は無事成功した
「ライト…よかった」
「腹の奥の違和感すごいな、しばらく剣を振れそうにないし完全に治るまで安静に過ごすか」
「ライト!!」
突然襖が開きライトと同い年位の男女が入ってきた
「明雪に美遥、久しぶりだな」
「急に帰ってきたと思ったらそんな体になってるし、復讐は上手くいかなかったのか?」
「色々あったんだよ、後で全部話してやるから泣きそうな美遥を何とかしてくれ、あとこの2人を紹介したい」
明雪と美遥、この屋敷でライトと一緒に育てられた子供でいつも3人1緒に過ごしていた、ライトの復讐にも手を貸そうとしたり仲間思いの熱い2人である、これまでのことを2人に話すと2人は…
「よし殺そう今すぐ殺そう」
「殺意を消せ仮にも忍者だろ明雪、それに復讐辞めるわけじゃないしな少しでも手の内が知れたから多少対策ができる!…けどこっちの戦力が足りないんだよな」
王宮の騎士は下級ですら少なくとも3000はいる、しかもアーシャのように龍の剣を持っている騎士が他にもいるかもしれない、対するライト達の戦力は魔法で援護をするロール 遠距離から攻撃できるファルフ そして前衛で剣を振るライト、明らかに戦力が足りない
「こっちも龍の剣を使えたら多少は戦えるけど龍の素材を手に入れるのだって城を攻めるのと同じくらい厳しいしな」
「龍…そういえばこの間出た祟り神に龍みたいなのがいたような」
「祟り神?」
「この街によく出てくる魔物だよ、かなり厄介なやつでな…」
祟り神、怨念から生まれる魔物で夜になると現れ人間を襲う、美遥は祟り神を祓うことができる祟り神退治の専門家で毎晩祟り神を祓っている
「今までの祟り神って狼みたいなやつばっかだったのに龍の祟り神か…何かありそうだな、今夜調査してみよう」
「ライトはゆっくり休んでて、治ったばっかりなんだから」
「ロールちゃん無駄だよ、ライトは1度やるって言ったら聞かないもん」
「昔も美遥を手伝うんだー!って勝手に刀持ち出して怒られてたもんな、でも無理だと判断したら気絶させてでも連れ帰るからな」
その夜祟り神の出てくる山に向かった5人、すでに何匹か龍型の祟り神が湧いていた
「祟り神を祓えるのはこの神楽すずだけだからみんなは援護をお願い、武器を月明かりに当てたら少しだけ弱らせることができるから」
「久しぶりだなこの感じ、こいつを使うのも」
ライトは牢に囚われた時剣を奪われていたが小さい頃に使っていた刀を持ってきていた
「!?気づかれたみんな構えて!」
全員武器を手に取り祟り神と交戦開始!ライトと明雪は美遥に近づいてくる祟り神の攻撃を抑え、ファルフは弓で上から攻撃してくる祟り神を打ち落としロールは全員の身体能力を向上させる魔法で援護をした
「クッ…傷が…」
「ライトあんま無理すんな!お前は無防備なロールちゃんを守ってろ!」
「……悪い」
数時間後祟り神を全て祓い終え下山しようとしたその時
「…?ねえライト…祟り神と同じような匂いがする」
「そういやロールは犬族だから鼻がいいんだった、どこから匂いがする?」
「こっち」
ロールの案内で山の奥に進んでいくと何もない崖の前で立ち止まった
「…この崖の奥から匂いがする」
「崖の奥……ロール、魔法解除術をここら辺一体にかけて貰っていいか?」
「うんわかった」
ロールが魔法を使うと崖には大きな洞窟が広がっていた、その後ロールは力尽き倒れてしまう
「魔力の使いすぎみたい、おつかれロールちゃん」
「行こうか…アッ…あとすこし頑張ってくれ俺の体」
洞窟の奥に進んでいくと人間や動物の亡骸があちこちに転がっていた、そして洞窟の最奥に着くと1匹の黒い龍と龍の亡骸があった
「こんなところに龍が住んでいたのか」
「これ結構まずくない?今から逃げても多分この龍に殺されかねないし」
「…立ち去れ」
龍の目が一瞬光ったそのすぐ後ロールの口から普段絶対に言わないような言葉を発した
「この少女の体に我が心を宿したのだ、お前達直ちに立ち去れ」
「理由を聞いてもいいか?あんたの後ろにある亡骸にも少し興味がある」
「…長くなるぞ」
龍は自分に起きた出来事を話し始めた、今から100年ほど前この龍はもう一体の龍と番になり王都に住み着いて人間達を見守ろうとしたがある魔術師に嫁に呪いをかけられたらしい、そしてつい先日嫁の龍は息を引き取ったとの事
「あなたの奥さんを思う気持ちが怨念になって祟り神が産まれたんだ…」
「悲しいことを思い出させてほんとにごm…アッ…ァァァァ!!」
「ライト!!手術跡が開いてる!今から医者を呼んでも間に合わない!」
「そなた達少し離れよ」
龍の心はロールの体から離れ元の体に戻るとライトのすぐそばに寄った
「お前の全てを見せてもらうぞ」
龍は目を閉じるとライトの記憶を読み始めた、ライトの前世 晃輝だった時の記憶、父である秀明のストレス発散で毎日のように殴られていた幼少期 母が病にかかって苦しんだ記憶 そして父に借金を押し付けられ命を落としたこと ライトに生まれ変わり幸せに暮らしていた頃 両親が殺される瞬間 人攫いにあい日の国に来た頃 学園でアーシャと過ごした日々 ロールとファルフと出会った記憶 復讐の相手が前世の父秀明だった衝撃 全ての記憶を読み取ると龍はライトから離れた
「我はこの者を知った、誰よりも辛い時間を過ごしながらも自分を見失わなず正しい道を歩める強き心を持つ、そして誰かを想う優しさもこの者にはある…この者の未来を信じよう」
すると龍はライトを龍の亡骸上に寝かせた、そして龍の体が輝き始めたその光がライトに向けられる、次の瞬間ライトの体も輝き始め傷口がみるみる塞がっていく
「……あれ?…俺…」
「ライト!!」
全員ライトの元へ走り出す
「よかった…ほんとによかった」
「…あんたが助けてくれたのか?」
龍は頷くとライト達を亡骸かは離した、そして龍は亡骸から板のようなものを取り出し自分の体からも同じものを取り出した、取り出した痕からは血が流れ落ちている
「何してんだよ!」
次の瞬間ライトの頭に龍の言葉が響く
(どの道我の命はもう長くない、それなら我と妻の想いをお前に託したいと思ったのだ、これは我々の逆鱗…龍の力の源だ、これを剣に変えることができればお前の復讐の役に立つだろう…それと我が願いを聞き入れて欲しい、妻に呪いを欠けた魔術師はまだ生きている、王の側近だった男だ…妻と我が無念を晴らしてくれ…そして復讐を果たせ)
「…わかった、助けてくれてありがとう…絶対に嫁さんの無念を晴らすから」
(頼んだぞ…龍の血を受け継ぐもの)
「ちょっと待てそれどう言う…」
(お前を治すために妻の血を分け与えたのだ、龍の体はそう簡単に腐敗せんからな、その血がお前を守ってくれるはずだ)
「そうか…みんな山を降りよう」
ライト達は逆鱗を持ち山を降りた、だが
「…なんだよあれ」
「…私達の街が……燃えて」
to be continued
ここまで読んでいただきありがとうございます!今回はライトの家族が登場しました!これからどういう展開になるかお楽しみください!♯6を投稿した後番外編としてライトが日の国に来た時のお話を書こうと思います!