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夏は何度でも巡るから【上】  作者: みむまに
0度目の夏
7/12

07


 学級委員の号令で、強制的に目を覚ました。今日の段取りなどが話されていたが、何も頭に入ってこなかった。


 学園祭当日、教室は朝から一段と騒がしかった。覚えてきた台詞をなんども口にする主役生徒や、アクションシーンの段取り、場面転換の繋ぎ行われるのであろう漫才の確認がそれぞれ行われている。それらを横に、私は今日使う学園祭の台本を立てて顔を隠し、眠りにつく準備に入った。昨日から家に帰っていない。初めての顔合わせの後も、これから数回東京に行くことがある。その際は夜行バスで早朝に京都に戻り、学校へ直行する。今日は授業がないため荷物はほとんどなかったが、身体がいつも以上に重たいため歩くスピードはむしろ今までよりも遅かった。


 体育館が使えないため、部活がなくて本当に良かったなどと考えながら意識を手放す。学級委員の話が終わり、HRが終わる。それぞれがまた話し始めた頃には、夢の中で冒険を再び始めていた。




 次に目が覚めた時には、教室に誰もいなかった。教室の外では、「やばい!急がな!」という声が聞こえる。そう言えば体育館で開催セレモニーがあった気がする。だが、どうしても起きる気になれない。放棄してやろうか、そんなことを考えていたが、体育館で点呼をされて、「前田さんがいません!」と騒ぎになっても面倒だ。行くしかないのかもしれない。


 廊下に出ると、走って私の方に近づいてくる女子生徒2人と目が合った。1人は知らない人だったが、もう1人は、桃だった。「あ」と声が出たが、桃は聞こえていないのか、無視をしたのか分からないが、そのまま横を通り過ぎてしまった。


 同じ部員と目があうと、「おはよう」と返したりすることが日常だったが、桃に対して、それを行うことはなくなっていった。部活でも、桃とは1つ上の先輩が引退してからさらに関わることが減った。練習相手にもなれず、相変わらず私の1つ上で境界線を引かれている。そして、新しく入って来た1年生から何人か引っ張り出して1グループの練習に参加させるという形が続いていた。


 先輩がいるまでの間は、一緒に練習する時は嫌な顔をせずにやってくれていた。しかし、本当に引退から全てが変わった。ダブルスのペアが解消されたわけではないが、最早ないも同然であり、相方と練習メニューも大きく異なった。酷い時は私の技術練習の相手がバドミントンの経験がない、高校始めの1年生と相手だったこともあった。今日だけかもしれないと最初は耐えていたが、後日、コーチから部員が参加しているメッセージアプリのグループに、「技術練習のペア組み合わせ表」として、私が高校始めの1年生と組まされている画像が送られてきた。そして「俺がいないときでもこれで練習してください!」とトドメの一言。それに「了解です!」と反応しているキャプテンを見て、笑えなくなってしまった。


 体育館には、出席番号順に整列をするように指示を出している学級委員の姿があった。危ない。来ておいて良かった。急いで自分のクラスの場所に行った。体育館は既にすし詰め状態であり、窓を開けてもかなり暑い。しかも制服だ。スカート中を思いっきりうちわで仰ぎたくなったが、私が自分の場所に座ると、タイミングよくセレモニーが始まってくれた。この日のためにたくさん練習したのであろう、吹奏楽の音が響き渡った。




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