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第14回 これで初期キャラは出揃った

 そこは、とある県の県庁所在地にある住宅街。その一角に、異様を構える屋敷があった。

 ゲーマー妖怪サティスファクション都の妖怪屋敷である。

 今日も今日とて、不穏な雰囲気を出すそこで、サティスファクション都は神妙な顔つきで座っている。

 場所はいつもの和室。

 つまりゲーム部屋である。

 LANケーブルの関係上、大きな部屋の中央の襖側の端に、大型のモニターがあり、そこに当然ゲーム機が、整然ととは言い難いが、置いてあった。

 その前に座るサティスファクション都は、屋敷の雰囲気と同じ不穏な気配を放っている。近くにいる、犬飼美咲(人間)と大寒桜(人間)にも分かる不穏さである。

「さて」

 サティスファクション都が口を開く。途端、不穏な雰囲気は薄れていき、その目を見開き、宣言する。

「『ギルティギアストライヴ』、第二βの時間よ、皆の衆!」

 わっ、と声が沸き立つが、美咲も桜も特に口を開いていない。なので。

「今のなんだよ、妖怪のサさん!」

「墓下のオーディエンスよ」

「墓ないだろ、ここ!」

「冗談はさておき」

「置くな!」

 騒々しいな、と顔に出すサティスファクション都だが、それでも続ける。

「で、大寒。今回の第二β、特徴は?」

「……イノと闇慈が追加だな」

「はい、そういうこと! 他にも、名残雪のブラッドゲージの上がり方が激しくなった気がするとかあるけど! 大きいのはそこよね!」

「微妙に私怨入ってるね」

「入ってないわよ!」

 と、はい入っていますと宣言するサティスファクション都を尻目に、桜が解説を始める。

「イノは、最近やってたREV2でも出てたから、少しは分かるっすよね?」

「ダッシュがふわーっと浮く人だね?」

「その理解が絶妙にあっているから困るっすけど、その辺が今回も通じるのかは必見すね」

「それともう1人の闇慈は、『ギルティギアゼクス』からのキャラで、地味に再登板に9年かかったけど、『ギルティギアストライヴ』ではどうなったのか、どうナイズドされたかが注目所さんね」

「昔の闇慈のままだと、ちょっとGGSTでは尖り過ぎてるからマイルドになるんかね」

「流石に昔みたいにガードポイントとかそこからの紅とか、前時代の遺物感あるわよねえ。スターターガイドからするとそこはなくなって、謎の当身があるのが分かってるけど」

「“水月のハコビ”だったか。あれがどこまで使えるかだよな」

「そうね。だから今日はその辺を確認するわよ」

 そこで、美咲が手をあげる。

「はい、美咲」

「えーと、対戦しないの?」

 美っ! と美咲を指さして、サティスファクション都は言う。

「ぶっつけ本番でなんとかなったら苦労はしないわよ!」

「かっこつけてるわりには言ってることが情けないぞ、妖怪のサさん」

「まあ、大寒。まさかあなた初手からわかるタイプ?」

「そんな器用なタイプじゃない。こっちもある程度使って分かるタイプだけど、積極的に対戦に行く方だよ」

「実践派ね? 私は研究家肌だから、ちょっとこもっちゃうのよね」

「βの時間は少ないんだから、研究してない方がいいんじゃないのかい?」

「時間が少ないからこそ研究すべきなんじゃないのかしら?」

 どちらも上を取っている、という顔で、お互いを見ているが、そこで美咲が一つの真理を見出した。

「そんな事やってないで、遊んだらいいのに」

「「それな!」」

 そういうことになった。


「とりあえず、イノ派? 闇慈派?」

 GGSTのトレーニングモードを開いてそう問うサティスファクション都に、桜は一拍置いてから答える。

「闇慈派」

「私はイノ派だからイノからね」

「だからこの会話要る?」

 馬鹿ねえ、とサティスファクション都は美咲を諭す。

「ちゃんと党派を表していないと、要らない所で喧嘩案件よ?」

「この場合、二党派乱立だから結局喧嘩じゃないかな?」

「それもそうね」

 喧嘩するか。という雰囲気を出すサティスファクション都に、桜は大人な対応をする。

「別にこっちは急いでないから、イノからでいいよ」

「なら、イノから触っていくわね!」

 そう言うと、サティスファクション都はカーソルを移動して、イノを選択する。

「眼鏡っこなんだね」

「今まで眼鏡要素無かったのに突然眼鏡出来たから、この眼鏡には何かあるのか、ってなるけどね」

「なんかビームでたりするんじゃねえの?」

「そんな訳の分からん眼鏡が出たら笑うわよ。でも本当にこの眼鏡は謎ね……」

「言い出しておいてなんだけど深く考えすぎだと思う。単に眼鏡っこが欲しかったんだよ」

「昔から眼鏡っこの闇慈がいるのに!?」

 ちょっとテンション高まってしまったサティスファクション都の肩を叩いて落ち着かせながら、桜は言う。

「でも、女の子に眼鏡っこいなかっただろ?」

「まあ……、そうね」

「そこで矛、収めちゃうんだ」

サティスファクション都はトレーニングモードでイノを動かす。

「ダッシュはホバー、なのはいいとして、空中ダッシュも相手の位置に向かっていくのね」

「ダッシュ、こんな遅かったっけ?」

 サティスファクション都は視線を惑わせる。

「前作、REV2ではもうちょい速かった気もするわね。でもこんなものじゃない?」

「そういうものなの? ゆっくりに見えるけど?」

「素人目ね」

 目を泳がせたのを無視して、そう言い切るサティスファクション都。

「玄人目でも遅い気はするがな」

 きーっ! と桜を威嚇するサティスファクション都を無視して、桜は問う。

「必殺技の方は?」

 言われて、サティスファクション都は適当に必殺技を出して一つずつ確認する。

 そして結論を出す。

「とりあえず、今まで使えた技は、ストライヴナイズドされているけど、あまり変わらないのかもしれないわね」

「だな。見た感じホバーダッシュが若干遅い気はするけど、ベースが違うとそう見えるだけかもしれない」

「そういうものなの?」

 まあねー、とサティスファクション都は答える。

「必殺技の動きも特に変化が見えないから、性能も大体似通っているでしょうね。いい意味で今まで通り」

 で、とサティスファクション都はボタンをポチポチと押す。

「通常技も大体同じね。たぶん細かいとこ違いそうだけど、基本REV2から大きくは変わってない感じに見えるわ」

「ガチのフレームでどうなっているか。そういうところかね」

「私もフレームまでは見切れないから、確信ではなけど、大体今までと同じ、かしらね」

 そう言いつつ、サティスファクション都はカチャカチャと動かして、覚醒必殺技を撃つ。

「限界フォルテッシモは地上版と空中版で違うわね」

「今まで微妙に出が遅いのがネックだったから、蹴りの追加は良い変化じゃないの?」

「そうね。より切り返し技として使う技になった感じね」

「対して、メガロマニア? ガード不能技として使うのかねえ」

「ガード不能技?」

 美咲がはてな? とするので、桜が補足を入れる。

「簡単に言えば、ガードをする事が出来ない攻撃ですね。投げに近いですが、投げは基本跳んで回避できるけど、ガード不能技はそれすら無理、ってやつです」

「それ、メチャクチャじゃない?」

「まあ、色々と制限というか、欠点もあります。出が遅いとか、ヒット距離が狭いとか」

「メガロマニアは後者ね。ヒットする距離がクソタレ短いわ」

 言いながら、サティスファクション都はヒット位置の確認をしていた。そこそこ近い位置にいたのに、飛び道具の方が出ている。

「うーん、ほぼ密着じゃないとガード不能にはならないわね。一応飛び道具技としても使えるけど、他にゲージ使った方がいいかもしれない」

「出るの遅いし、飛び道具として使うかっていうと、それなら抗鬱音階ロマキャンの方か」

 で、と桜が追及する。

「これは、どう思う?」

「いい意味でも悪い意味でも、GGSTのシステムとどう組み合うか、って感じね。やることは安定して変わらない感じだけど、それが上手く活きるか、ってとこね」

「この人のやることって?」

 ああそうか、とサティスファクション都はイノを動かしながら追補する。

「このキャラは、まずこうやって転がして」

 言いながら足払いをし、そして必殺技でそれをキャンセルする。

「この抗鬱音階を起き上がりに重ねて」

 音符が飛び、それがキャラに重なると、弾ける。それから先ほどのホバーダッシュで近づき、攻撃を出す。

「空中技判定、つまり中段になっているホバーダッシュからの攻撃と」

 そのダッシュからの攻撃から、またしゃがみキックからの足払いまで繋ぎ、抗鬱音階。

 そしてまたダッシュから今度はダッシュ攻撃を出さずにしゃがみキックからの足払い。

「小足からの足払いの下段択の二つをメインにやっていくのが今までの基本で、今回もそれっぽいわね」

「上手くGGSTでも噛み合えばいいんですけどねえ」

「研究次第という言葉が、我々の切り札」

「とりあえず、分かんないんだね」

 ぐっ、とサティスファクション都と桜が押し黙る。

 流石に美咲も勘付く。

「図星?」

「闇慈を見ていきましょうか」

「だな」

「あー、その、ごめん」


 キャラクターは闇慈に切り替わった。

「闇慈は今回だいぶ違うのよね」

「ガードポイントがなくなったからな」

「ガードポイント?」

 またはてな? とする美咲にサティスファクション都が解説。

「ガードする場所がある、ということ。ガードするポイントがあるってことね」

「つまり?」

「相手の攻撃をガードしつつ、攻撃が出来る、の方が分かりやすいでしょうね」

「……今からそういうつもりだったのよ」

「ガードしながら攻撃出来る、って強くない?」

 当然の疑問に、サティスファクション都と桜の返す言葉は同じだった。

「あー」

「あー」

「その反応は何なの?」

「そう考えていた時期が俺にもありましたってことよ」

「強くないの」

「あー」

「あー」

「また」

「いやだってね、よくよく考えて見なさいよ、美咲。このガードポイントって、技の最初から最後まで、って訳じゃないのよ?」

「攻撃の途中から出るって感じ?」

 頷くサティスファクション都。

「動きのどこかがガードポイントとしてあるわけ。でも、その数瞬しかないタイミングを毎度狙って使えるかしら?」

「あー、成程。それは難しそうだね」

「実際難しいんすよ。その上で、ガードポイントで受けた時だけ出せる技とかもあるんすよ」

「今回はコマンド技になってるわね、紅」

「花鳥風月も普通のコマンド技だぞ」

 コマンド表を画面に開いて、サティスファクション都が言う。

「なんかホールドで水月のハコビって技をしつつ移動して出るみたいだわ」

「水月のハコビ、っていうと当身か」

「当身? 体を当てるの?」

 聞きなれぬ言葉をオウム返しする美咲に、桜が答える。

「あー、ここ正確に言うと結構面倒なんで詳細はいつかしますけど、これもまた相手の攻撃を受けてでる動作、って意味の格ゲーマースラングっすよ」

「というか大寒、これ無茶苦茶相手の技取れるわよ」

「えっ、下段も?」

「下段も。というかこれ、飛び道具と投げ以外大体取れるわよ」

 そういうと、サティスファクション都はダミーをCPUにして、その攻撃に水月のハコビを適当に使う。

 ひらりひらり、と闇慈が舞い踊る。

「攻撃が出る訳じゃないにしても、これは結構幅広く取れるみたいね」

 そういうと、サティスファクション都は水月のハコビでダミーの攻撃を受け、移動し終わった所で攻撃を当てる。

「牽制技をとって殴る、が基本でしょうね」

「それでもわりと強い武器なんじゃないのか」

「結構時間は長いけど、それでも出初めと終わりにはきっちり攻撃食らうみたいだから……」

「分からないの?」

 無垢なる言葉。

「わ、わからいでか……!」

「いや、分からんでいいだろ。いいとこ見せようとし過ぎだ」

「いいとこ見せたいじゃない!?」

「そういうとこだぞ」

「結局どうなの?」

 美咲の無垢なる問いが続く。サティスファクション都は懊悩していたが、桜は簡単に答えた。

「ちょっとちゃんと使わないと分からないっすね」

「それもそうだね」

「DAMッ!!」

 サティスファクション都はなにやら憤懣やるかたない感じだが、それは無視して桜はサティスファクション都からアケコンを奪い、闇慈を動かしていく。

「とりあえず、紅は無敵は無さそうで使えるか微妙な路線だけど、風神の派生はきっちり揃ってる」

 そう言いながら、桜は闇慈を動かす。「風神!」と技を出し、そこから更にボタン操作で動いていた。

「こういうタイプもあるんだね」

「派生するタイプが、ってことすね? それについては闇慈はこの派生をうまく生かすのがメインってとこあるキャラすよ」

「でも、今回はHS版がないから、上手く使えるかしらねえ」

 憤懣やるかたないから復帰したサティスファクション都が、懸念を言う。

「風神は溜めが可能だから、そこでなんかあるんじゃないかと思うが?」

「水月のハコビから風神に移行、みたいなだけじゃないかしら?」

「ちょっと当ててみる」

 そう言って、桜はガードしていない木偶に向かって、風神を溜めて、当てた。

 ぽーんと、木偶のキャラが高く浮く。

「……」

「……」

「高く浮くね」

 無垢なる言葉だったが、それでもサティスファクション都はそれを濁さずにはいられなかった。

「浮き過ぎ!」

「いやまあ、それはそう」

「後、疾の二段目が中段じゃない!」

「ザトーも中下段重ねなくなったっぽいし、そういうタイプのガー不連携は今回はご法度になってるんだろう。しょうがないと思うぞ」

「ぐぬぬ……」

 無駄に苦虫嚙んでいるサティスファクション都を横に捨て置き、桜は他の技を確認する。

「通常技は、細かく変わってるな。遠Sと屈Sが使い易そうだ」

「でも、立ちHSが短い気がするのよね……」

 苦虫から復帰したサティスファクション都がここぞと言ってくる。

「確かに短いような気がするが、印象が強く残っているからかもしれないだろ」

「いや、短いわ……。たぶんじゃないわ……。確認しないと……」

 そういうと、サティスファクション都は部屋の片隅にあるレゲー置き場に向かっていった。PS2を漁りに行ったのだ。実機で確認するつもりなのだろう。

「その情熱を他に活かせないのかね」

 呆れる桜に、美咲ははてな? としていう。

「活かしているから、ゲーマー妖怪なんじゃない?」

 しばしの間の後、桜は言う。

「あー、言いたいことは分かりますが、わりとそれだけだと意味不明すね」

「そう?」

 と、部屋の片隅でサティスファクション都が吠えた。

「入ってねえー! わよ!」

 どうやら、パッケージの中にそのパッケージのゲーム、GGXXAC+が入っていなかったようだ。

「片づけないから」

「ちゃんと私にとっては理路整然と片付いてるの! というか、そもそもだけど、これ誰かに貸したゲームのパケの中に入ってるかもしれない!」

「理路整然とは」

「入っていると理論的に分かっているわ!」

「じゃあ、誰に貸したの?」

 しばしの間。その後、サティスファクション都は言った。

「愚鈍の爺様かもしれないわね……」

 はあ? と桜と美咲は同時に言った。

(続く)

どうにも時間がかかり過ぎます。格ゲーが面白いのがいい。

でも、プレイしないとネタがでないとこありますから、どうしてもこうなります。

この辺の折衷案をどうにかしないと、先は長いかもしれません。

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