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第12話 旧作だからこそ出来る! 出来るのだ!

 そこは、とある県のとある街。その住宅街の一角にある。

 ゲーマー妖怪、サティスファクション都の屋敷である。

 その屋敷自体も妖怪であり、その性質上、妖気の吹き溜まりに生まれるモノだ。

 通常なら、人間さえ妖怪化しかねないレベルの妖気を吸い、大きくなるだけのモノだ。

 なので、そこに妖怪が住むことによって、妖気を屋敷妖怪に行き過ぎないように調整している。

 当然、住む妖怪が大妖怪ならより妖気を吸う訳で、異常なレベルの妖気だまりにある屋敷妖怪には、かなり来歴の古い、大妖怪が当てられる。

 そう言う訳で、サティスファクション都は市街の外れにある、その大きな妖怪屋敷を根城としているのである。


 その根城で、ゲーマー妖怪サティスファクション都は言った。

「『ギルティギアストライヴ』の発売日は延びた!」

「延びたね」

「延びたな」

 そういうのは犬飼美咲と大寒桜である。本日もサティスファクション都邸にお邪魔している。

 オウム返しする二人に、サティスファクション都は言った。

「だから今日は『ギルティギア イグザード レベレーター2』をするわ」

 モニターの映像は、既にGGXrdREV2のメニュー画面が表示されていた。

「全然脈絡がないけど?」

「いいえ、あるわ。『ギルティギア』の名を冠するゲームなら、常にソル=バッドガイはいるのよ!」

 と、どこかヨガのポーズのような姿勢をしたサティスファクション都は、言いきる。

 それを、桜が受ける。

「成程、REV2でも、出来る事はあるってことか。基本操作とかなら、共通項はあるし」

「そういうことよ。とはいえ、REV2からストライヴでは、変わったとこも多いから、やることは絞っていかないとね」

「まず、おさらいしてみるか」

「そうね。まず、美咲が今までやっていたことは?」

 問われ、美咲はうーんと記憶を探り、頭をひねる。

「まずヒット確認でしょ? それから空中ダッシュとガード。あれ、これだけだったけ。わりと色々やらされた気になってたよ」

「完全に気のせいっすけど、それだけでも十分一杯一杯だったってことでもあるっすよ」

 成程と頷き、美咲はもう一度頭をひねる。

「ということは、まずそれをレブ2っていうのでやるんだね?」

「そうね。

 でも、実際の所、REV2だと攻撃のモーションが違うし、空中ダッシュの感触も違うから、基本的な動きを手癖にしておくという練習ね」

「手癖」

「そう、手癖。

 GG系なら、これをどのキャラも使う、という動きを体に覚えさせる、ってとこね」

 美咲は三回目の頭ひねり。

「効果あるの?」

「あら、疑念?」

「そりゃね。体に覚えさせるってよく聞くけど、本当に効果あるのって常々思うから」

 桜がむむと割って入る。

「基礎の反復は、地味っすけど重要っすよ」

「どの辺が?」

 桜は悠と答える。

「それは動きを考えなくても出来る、っていうのがまずあるっすね」

「考えなくても出来るのがいいの?」

「美咲、考えてみなさい。歩いている時に、一々前に歩くことを意識しているかしら?」

 サティスファクション都の問いに、失敬な、と答える美咲。

「そんなことあるわけないよ。一々歩く、歩く、って考えてたらくたびれちゃうでしょ、そんなの」

「そういうことよ。格ゲーでもそう。

 一々やることをやるぞ! ってやってたら意識はそっちに行っちゃうでしょ?

 だから、基礎的な行動を意識しないで出来るようになれば、その分他の事に意識が使える。

 それが基本の動き、歩くようにできないといけない事なら尚更、ね?」

 ということで、と話を区切ると、サティスファクション都はアーケードスティックを美咲に渡し、言った。

「REV2のミッションモードをみっちりやるわよ!」


「ミッションモード?」

「これはGGSTにもあるようだけど、基本操作から上級テクニックまで教われるモードよ」

「若干上級テクニックが多かったっすけどね。でも懐かしいなあ。まだまだ下手だった頃のミッションモード」

「私からすると最近に入ったモードって感じはするんだけどね、ミッションとかは」

「そりゃあ、都ちゃん。生まれた時から格ゲーなかった方だからじゃない?」

「そう言われると、一瞬納得するわね」

「全部納得しろよ。歳だってことを」

「歳は関係ないでしょ! 歳は! 私はまだ若いわよ」

「ミッションで何をすればいいの?」

「スルー!?」

 そりゃそうだろ、と半眼に込めつつ、桜はサティスファクション都に問う。

「何をさせるんだよ、妖怪のサさん」

「綿密に使えるやつを調べてあるから心配しなさるな。まずNO.01。ダッシュから近S入れるミッションよ」

 開かれたミッションNO.01はかなり距離がある状態で、ソルとカイが相対している。

「遠くない?」

「とにかくダッシュよ、美咲!」

 言われ、美咲はソルを操作する。前にぐっとダッシュして、迫っている間に、カイは必殺技を使おうとしていた。

「あ、ここ!」

 と遠Sを振る美咲。しかし、これはミスの判定が出る。

「なんで!?」

「近Sを当てろってあるでしょ?」

「近S、……素人目線かもだけど、遠くない?」

「まあ、最初にあれを見て遠Sでダメなの納得いかないっすよね」

「大丈夫。相手は時間がかかる攻撃しているから、余裕で間に合うわよ」

「ホントかなあ」

 再び挑戦するが、やはり遠Sが出てしまう。

「もうちょっと近くかー。でも攻撃当たっちゃいそうなんだけど」

「怯えなくていいわ。ダッシュも問題なく出てるし、立ち止まらず一気に行けばいいのよ」

 言われ、三度目の挑戦。今度はさらに踏み込み、近Sを当てる事に成功する。

 そのままSのボタンを連打して、目標達成である。

 とはいえ、これは5回中3回成功でもミッション達成である。

「後残り二回、しっかり成功させなさい」

 そういうことになった。


「でも、あんまり実戦だと無い状況だね、このミッション」

 残り二回を成功させるのにわりと手間取った美咲は一息ついている。そこに桜は無情なことを言いだした。

「終わってから言うの!?」

「実際の所、遠Sが当たるくらいでやるのが基本的な狙いだわね。

 GGSTだと、前Sが当たる間合いくらいに行くようになるのかしらね。

 でもまあ、ダッシュで突っ切るクソ度胸が要る時もあるからね。不要じゃないわ」

 そう言ってから、サティスファクション都は次のミッションを選択させる。

「次はこれね。NO.03。ダッシュの緩急よ」

「緩急?」

「まあ、やってみなさい」

 唯々諾々とする美咲。またソルが走るミッションのようなので、開幕ダッシュを決める美咲。しかし、木偶の方は攻撃を置いてきていた。

 それに、美咲の操るソルは問答無用でぶち当たった。

「え? ずるくない?」

「緩急っすよ、美咲先輩。緩急」

「緩急? 一旦止まればいいの?」

 二度目。当たる手前で止まってみるが、すぐに相手は必殺技を撃とうとしてくる。

 慌ててダッシュを敢行するが、少し止まり過ぎていたので、相手の必殺技が完成してしまう。

「え? ずるくない?」

「大寒の言い方が悪かったわね。正確には急緩急ってとこ。走って止まってすぐ走る」

「なんかあの紋章みたいなのに当たらない?」

「あれはすぐに消えるから大丈夫よ。どんとぶつかって来なさい」

 そういうことになった。


 十回くらい同じミッションをすることになったが、なんとかそのミッションは成功した。

「これも意味無いの?」

「ちゃんとあるわよ。でも、さっきと同じことはまずないけどね」

「置きダストからチャージアタックって流石に対戦で使ってこないもんな」

「あそこから攻撃の性能を変えるの、GGSTでは無い要素だしね。でも、相手の牽制に対してスカす、という動きは結構有用よ」

「……これ、もしかして結構深い所?」

 美咲の勘付きに、サティスファクション都が笑む。食っちゃうぞって感じで。

「やめいやめい。そういうムーブが嫌われるんだぞ、妖怪のサさん」

 桜に言われて、ちょっとむくれるサティスファクション都。無視して、桜は言葉を作る。

「この辺はゲーム次第なとこあるっすけど、GGシリーズはダッシュを上手く使うゲームなので、ここのいかに触るか、攻撃を当てるかというのは結構重要になってくるっす」

「当然、相手キャラの攻撃に当たらなければ、こちらが優位、というのはさっきので大体分かるでしょう?

 それをもうちょっと感得する為にお題のNO.02やってみるのよ、美咲」

 またそういうことになった。


 ミッションNO.02は相手にダッシュで近づき、攻撃するものだ。

「これさっきやった1のとどう違うの?」

「まあ、やってみなさい」

 言われるがままに、美咲はスタートするとされるダッシュを敢行する。

 相手のカイは、先ほどと同じくスタンエッジ・チャージアタックを撃ってくる。

 が、先ほどとは違う。出すのが早いのだ。

「あれ? もっと待ってくれなかった?」

 と、言いつつも、ダッシュから先ほどと同じように動こうとした手の動きは急には止まらない。慌てて攻撃を出そうとした時には、相手の飛び道具は出ており、それに美咲の動かすソルがぶち当たる。

「えーと、つまり?」

「さっきの遠Sを当てると失敗だったけど、こっちでは成功なのよ」

「そのぶん、相手が早く攻撃してくるっすけどね」

「な、成程?」

「まあ、この辺りは習うより慣れよって範囲ね。とりあえず、遠Sの間合いを軽く理解しなさい」

「はーい」

 とはいえ、先ほどとは違って撃ってくるタイミングが早い。なので焦ってしまう美咲に、やいのやいのと野次が入る。

「すぐ攻撃したい気持ちは分かるけど、落ち着いていくのよー」

「あー、スカっちゃう」

「落ち着いてー、落ち着いて―」

「いや、でもこれ結構焦るよ? って、近づき過ぎた!」

「感覚としては先端を当てる、というか置いていく感じよ」

「どういう感じそれ!?」

 やいのやいのとされながら、美咲は5回目に成功となった。


「さて」

 と、一旦置いて、サティスファクション都は言う。

「いかがだったかしら?」

「美咲先輩、あれ、殴りましょうか?」

「いやいや、少し泳がせとこうよ」

「しかし……」

「不穏なことはさておき、まずミッションの基本のとこだった訳だったから、どうかなあ、と」

 やや下手に出るサティスファクション都の言葉に、美咲はうーんと頭を左右に。

「なんとなく分かったような分からなかったような」

「そりゃそうっすね。走って殴ってただけだし」

「とはいえ、そこはこのゲームの基本の一つなのよ。

 ダッシュから攻撃に行くのと、それを牽制技や置き技で止めるのと。

 そしてそれを止まって回避してまたダッシュするのと。

 そういう連環があって、その中でそのキャラの特性と個性が鎬を削る。

 それがGGシリーズの地上戦なのよ!」

「妄想はさておき」

「妄想!?」

「さっきのミッションの意図は、ダッシュと牽制、置きを意識させるってことっすけど、これはもうちょい補講が必要っすね」

 そういうと、桜はアーケードスティックを素早く動かし、トレーニングモードに移行する。

「いっちょ打ち込みしましょう」

「でた、数!」

「正しい数は自信を生むので、問題ないっすよ」

 言いつつ、先にスティックを動かしながら、桜は説明する。

「結局のところ、さっきやったのはいかに地上から攻めるか、あるいは地上で守るか、って話なんすよね」

「歩いている時が地上、ということはジャンプしている時が空中?」

「その辺からっすか。でもその通りっす。GGシリーズはわりと滞空時間が長いんで、よりその傾向が高いっすけど、それはさておき、地上戦っす」

 そういうと、桜はソルを動かしながら説明を始める。

「ミッションでは近Sの間合いまで走るってお題だったっすけど、基本的には遠Sを当てるのを狙うっす」

「つまり、NO.02の動きが基本ってこと?」

「そう思って差しさわりはないっすね。

 近Sまで行こうとするのは、相当大きな隙を見せた時、つまりダッシュから確実に当てられる時とかに限定されるっす」

「ソルの場合は遠S、あるいは立ちHSという横押しが基本ね。これにガンフレイムを使って押していく、という形ね」

「ふむふむ」

 サティスファクション都の言葉にあまりよく分かってないけど頷く美咲に、桜がもう一段まとめる。

「結局、このゲームの地上戦はこちらが近寄りたい間合いと、相手に近寄られては困る間合いの位置の取り合いみたいなとこあるっすね。

 自分が有利になりやすい間合いにいかに寄るか。

 自分が不利になりやすい間合いからいかに離れるか。

 そういうやりとり、ってとこっすね」

「ソルはその辺がわりと分かり易いやつだから、一つやってみた訳よ」

「本当にそういう意図があったか、妖怪のサさん」

 視線に疑いがあるのに、サティスファクション都は怒る。

「あたりきしゃりきよ! というか、大寒、あなたあたし舐めてるでしょ!?」

「今まで気づかなかったのかい?」

「大人だから言わんかっただけよ! というか、あなたがそうなら、こちらもそうよ!」

 そう言うと、サティスファクション都は美咲からアケコンを引き上げると、

「3先!」

 と3戦先取の試合を申し込んだ。桜は、苦言を呈す。

「美咲先輩の修行はいいのかよ」

「それはそれ。これはこれ!」

「そこ分ける意味が分からん、が」

 と桜もアケコンを手元のいい位置に持ってくる。

「挑まれたらやらない訳には叩きのめさんといかんね」

 ということで、バチバチの試合が始まり、美咲は置いてけぼりとされてしまった。

 まあ、それでもレベルの高い対戦に分かる部分が増えたので、それはそれで楽しかったのだが。

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