プロローグ―内地と外地― 1-2
戦線は徐々に後退し、朝鮮半島まで後退するのは時間の問題だった。
また、中華民国はポツダム宣言受託を認めた一方で、共産党軍はなおも停戦に応じる気配は無かった。このため、関東軍はソ連軍とモンゴル人民共和国軍、中国共産党軍の3ヵ国を相手にしなければならなかった。
なお、満州のほか南樺太においても戦火は広がり、後方に海しかない樺太の軍団が壊滅、玉砕するのは確実だった。
一方で、内地と言っても限りなく遠い千島列島のさらに最奥の島である占守島ではソ連軍偵察機が島上空を連日飛行していた。このことから占守島、あるいはその隣の島幌筵島への上陸が予測されていた。既に占守島に展開する日本軍の150mmカノン砲と、カムチャツカ半島最南端ロパートカ岬に展開するソ連軍130mmカノン砲が海峡を越えて砲撃中であるとの報告も来ており、上陸開始はそう遠くないものだった。
満州、樺太、千島列島の血なまぐささと比較して、本土では着々と降伏の準備が進められている。ポツダム宣言受託の後に連合国から真っ先に届いたのは全軍の停戦だったが、これはソ連侵攻に対応する軍団を除く組織のみに限定された。
ポツダム宣言受託拒否という満州や朝鮮半島への野心が恐らく連合国からも問題とされているのだろうか。本来無条件降伏を受け入れるその宣言が一部の戦争継続を認めるというのは不思議な現象であると言わざるを得ない。もちろん、実際のところ何もわからないのが現状である。
日本の降伏という事で、陸軍は九州から関東、東北までのほとんどの部隊が武器を降ろしていたが、中にはまだ徹底抗戦を唱える者も存在していた。
一方、海軍艦艇については潜水艦の即時浮上と投降のほか、震洋や回天などの特攻兵器を破壊せよとの命令が連合国より発せられていた。皮肉にも、日本政府としてもクーデターの阻止の為には特攻機の活動停止が望ましく、早急にエンジンの取り外しが行われていた。
なお、満州や樺太、千島列島に残された非戦闘員の救助のためありとあらゆる商船が日本海を航行していた。連合国はこれに対する攻撃を禁止したことを連絡しているが、ソ連太平洋艦隊による攻撃を阻止することはできない。このため、海軍艦艇はなおも日本海において活動を続けていた。
これらをまとめると次のようなこととなる。満州、朝鮮半島、樺太、千島列島の防衛は現状の陸上戦力のみで対処しなければならず、本土からの支援が一切受けられないこと。そして、日本海を経由して日本海へ帰国する商船は攻撃対象のままという事である。
彼らはその絶望的な戦争で戦い、そして死んでいった。