表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/37

最期の連合艦隊 3-3

 旗艦響は純然たる駆逐艦だ。列強各国の駆逐艦建造に大きな影響を与えた吹雪型は、間違いなくこの海上挺身隊最大戦力であった。なぜなら、残り3隻は駆逐艦でさえないからだ。


 その3隻は“択捉”、“笠戸”、“福江”である。そう、択捉型海防艦である。艦隊戦を意識していない海防艦3隻が挺身隊の残りの戦力なのである。

 さらに、その3隻はほとんど無傷であり、かつ北海道付近に停泊していた、というだけで今回の作戦に選ばれたに過ぎない。艦隊行動などは初めて行われた、本当に寄せ集めでしかなかった。

 

「艦長!占守島から無線連絡!!」

 ソ連軍の占守島への上陸から既に3日が経過していた。占守島そのものは上陸可能な海岸が限られるため、戦力の集中による防衛力は決して小さくないと考えられている。しかし、それでも本土防衛のため戦力が減少しており、増援も見込まれない現状では、いつ壊滅してもおかしくはない。

 その占守島から連絡があるという事は、それだけまだ玉砕していないことの証明でもあった。


「読み上げろ」

 響艦長の宇久奈が発する。無線は暗号化されておらず、また敵味方を問わず送られていた。

「は!“我ら、未だ健在。竹田浜にて遅滞戦闘中”。以上です!!」

「全艦艇に通達!艦隊目標変更なし、占守島はなおも戦闘継続中。」

 

 艦橋に配属される全乗組員が声を上げる。この連絡は宇久奈にとって、また海上挺身隊総員にとって、士気向上につながった。それは、同じ連絡を受け取った残存日本軍にも同じであった。

 もっとも、それがいつまでも続くわけではない。既に満州では戦線が大きく後退したと報告があった。物量で劣る日本に勝ち目がないのは明白だった。

「占守島へ連絡を。平文で構わない!“連合艦隊、現在北上中。弾薬満載”と」

 

 もちろん、宇久奈たちは海上挺身隊だ。世界に名をはせた連合艦隊はもういない。しかし、それでも日本国民にとって連合艦隊は誇りであった。それは、海軍とは犬猿の仲とも言える陸軍にとっても同じであった。

 この無線が届けば、少しばかりではあるかもしれないが戦意高揚に繋がるかもしれない。そんなかすかな期待がこの一文の正体であり、現在できる最大の支援だった。

 

 

 さて、その海上挺身隊が占守島にたどり着くのは予定通りとはいかなかった。

 日ソ両艦隊による艦隊戦の1つ、“パラムシル沖海戦”が生じたためだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ