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王様ヘルプ!

「ああ、やっぱり美味しいわ。リーディエナのお茶は」

「ふわーっ、すごいぃいい!すごいですよ、コレ!ねえ、姫様」

「確かに、このお茶の香り高さは今までのものとは違います」


 あの後「アクィラ殿下からです」と、カリーゴ様が届けてくれたお茶は、ウエディングドレスのフィッティングの後で王妃殿下がご馳走してくれたあのリーディエナのお茶だった。

 もう一度飲んでみたいと思っていただけに、これは嬉しいサプライズだ。それに私の部屋で飲むのなら、ハンナやミヨにも飲んでもらえる。

 どうせなら美味しいものは分かち合いたいじゃない。そう言って、同じテーブルに着かせてからのー、一緒にお茶会だ。


 勿論ハンナは主人である私と同じテーブルに着くことを辞退したが、私が毒味も兼ねてちょうだいと言えば、何か考えてから渋々ながらも席に座った。

 王太子からのプレゼントを、直近の従者が持ってきていて、毒味が必要なわけがないのだけどねえ。

 どんだけハンナはアクィラ殿下が嫌いなのだろうか。まあ、一緒にお茶が出来るのだからいいわ。申し訳ないけれどそこは泥をかぶってもらおう。


 それからついでにと、ヨゼフも無理矢理仲間に入れた。椅子は彼の分もあったのだけれど、そこは立ったままでいいですと言われたので、彼の意思を尊重しておく。

 窓枠のところによりかかりながらカップを手に取る彼の姿は中々様になっている。騎士として鍛えられている体格の上に、きりりとした眉。赤毛が夕日に反射して燃えているようだ。

 これで中身が知られなければ、このトラザイドでもそこそこモテるんじゃないないかな。

 野性味溢れる残念なイケメン。ちっ、イケメンの字面が修飾語に打ち消されていく。


 そうして、ヨゼフがお茶を一口含み飲み込んだところで声を掛けた。


「ね、ヨゼフ、どう?懐かしい香りがするかしら?」


 リーディエナは今でこそボスバ領の特産ということになっているが、元々そこはボスバール国であり、ヨゼフの祖国でもあったのだから、きっと昔を懐かしめるんじゃないかと思ったのだ。

 しかし、彼はそんな私の思惑とは全く別の、苦々しい表情を浮かべる。


「あ……ヨゼフ?」

「いえ、まあ美味いことは美味いんですが、この香りは……そういい思い出もなくて」


 そうだった!ヨゼフは小さな頃に両親とボスバール国を出てから苦労をしてきたと話をしてくれたじゃないか。

 その出国の理由も、もしかしたらボスバで何かあったせいなのかもしれない……


 あまりにも短絡的な考えで、申し訳なくなった。もう少し気を使ってあげるべきだったと、カップの取っ手をきつく握る。


「えー、思い出ってなんですぅ?」


 しかしミヨはそんな私の反省もものともせずヨゼフへ直接切り込んだ。

 ちょ、空気読みなさいよ。あんたはもうっ!

 すると、口を尖らしたヨゼフが一気にお茶をあおり飲み干した。


「ガキの頃は花畑に飛び込んで遊んだり喧嘩したりしてましたからね、花をぐちゃぐちゃにした時なんかそりゃもう、きっつい説教とげんこつと飯抜きまでがセットだったからなあ……ホントいい思い出がない」


 自業自得だ、そりゃ。なんか気を使ってやって損した。


 ヨゼフの独白にげらげらと声を上げて笑うミヨを放っておいて、ハンナへ向かいお茶のおかわりをお願いした。

 美味しいお茶とは言え、私と同じテーブルを囲むことに戸惑いを隠せないハンナは喜んで立ちあがり、二杯目のお茶を淹れてくれる。ミヨはといえば遠慮なく、ルカリーオ商会から持ち込まれた焼き菓子を手に取り、ほれよっとヨゼフへと放り投げた。


「それでぇ、リーディエナってどんな花なんですか?私も見たことないんですよぉ。ボスバなら見たことあるんですよねぇ?」


 そう、リーディエナの生花はどこにも流通していないので有名だ。摘み取ってから半日で枯れてしまうという特性のせいらしい。

 そしてその希少性を守るべきためなのだろうが、種の流出に対しても非常に厳しいため、香り高いその花はボスバ領でしか栽培されていないのだ。


「ある。だが、知らん」

「なんですかぁ、それ」

「お前、俺が花なんて説明できると思うか?」


 どやぁ、とふんぞり返るヨゼフに対し、また大きな口を開けて笑うミヨ。

 本当にこの二人どうにかして欲しいわ。

 ばりばりもぐもぐと焼き菓子を頬張る二人を横目に、ハンナが淹れてくれたお茶をゆっくりと口に含むと、うっとりとするような芳醇な香りが高く舞い上がる。


「こんなにいい香りのお花だものね。隠したくなるのもわかるわ」


 ふっと思いついた言葉を口にすると、ヨゼフがあっさりと言い返した。


「逆ですよ、姫様(ひいさま)

「え?」

「ボスバールの奴らは花を出したくないんじゃなくて、人を入れたくないんですよ。あそこはよそ者をめちゃくちゃ嫌うんです。十五年前トラザイド王国の中に入りましたけど、それだってよそからの侵略よりは、マシだってんで受け入れただけですからね」


 マジか。そう考えたことが顔に出ていたのか、ヨゼフはマジですよと答えて勝手に続ける。


「たしか特別生産特区とかで出入りを相当絞ってんですよ。それもボスバール側の要望で」

「はー……よく知っているのねえ」


 そんな内情まではリリコットの知識の中にもなかった。流石はボスバ領出身だ。

 あれ、でも十五年前っていうと、ヨゼフだって七歳くらいなんじゃないの?


「まあ、一応親父が王様の弟だったんで」

「お、王様?は、王弟?」


 ……っお前はー!何でそういうことをさらっと言うかな!?

 ヨゼフ、王族?元王族かいっ!

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