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アウローラ~綺麗なお義姉さんは好きですか?~

 ずっとずっと憧れていた。

 お噂を聞く度に、その高潔な淑女たる行いに、自分の理想を重ねていたの。


 我がトラザイド王国の第一王女であるルーナエお姉様は、私が5歳の時にハザーランド王国へとお嫁に行ってしまわれてたので、それから一度も会えていない。

 だからこそ、アクィラお兄様の婚約者となられた、モンシラ公国の第一公女メリリッサ殿下のお話を、いつもいつもみんなにねだった。


 とても美しい方だと聞いていた。まるで金糸のような髪をしているのよと、一度メリリッサ殿下と会ったことのあるお母様が教えてくれた。

 モンシラの高貴な女性の間では、卵とハチミツでの髪の手入れが流行っているのだと聞けば同じようにしてと侍女頭に頼んだ。

 香水がとてもお好きだと聞いたから、お母様にお願いして、私にも似合いそうなものをいくつか譲ってもらった。

 刺繍がとてもお上手で、繊細な図柄をあっという間に仕上げてしまうと聞くと、私もと頑張って練習をした。

 あまり上手にはならなかったけど、だったら教えを請えばいいのだと、勝手に決めて浮き立ったのだ。


 民への奉仕も忘れず、公国の皆に支持されている第一公女、メリリッサ殿下。

 彼女がアクィラお兄様のお嫁さんになり、私のお義姉様になってくれる日を、それこそ指折り数えて楽しみにしていたのに――


「え?今なんて言ったの?」

「……はい、その、メリリッサ殿下なのですが、今公国では、ええと……悪公女と呼ばれているそうなのです」

「まさか!ねえ、間違いでは?それは、ほら、第二公女のリリコット殿下の方ではなくって?」


 あと三ヶ月ほどで、遠慮なくメリリッサ殿下をお義姉様とお呼びできると楽しみにうち震えているところへ、侍女の一人がこっそりと私に耳打ちをしてきた。

 とても信頼をしている侍女だけれど、流石にその話を鵜のみには出来ない。


 今まで何一つ悪い噂の無かったメリリッサ殿下が、何故ここに来てそんなことを言われなければいけないのだろうか。

 誰かの陰謀?あまり勉強の出来ない私だけれど、必死に考えてみる。

 大好きなお兄様と憧れのお姉様の結婚に泥を投げつけようとする人は許せるものではない。

 そう息を巻いて話を聞き回ると、皆口を揃えて同じように答える。


 大国ガランドーダの王太子殿下が、婚約者となったリリコット公女殿下のために、真実を明らかにしたのだと言った。

 今までのメリリッサ公女殿下の素晴らしい行いの全ては、リリコット公女殿下のものであったのだと。


 それを聞き、私の足下から何かが崩れ落ちていく音が聞こえた。あれほどお手本にと思っていたメリリッサ公女殿下の功績が、全て他の人のものだったなんてと、とてもとても裏切られた気がしたのだ。


 お兄様はこの事を知っているのだろうか?

 結婚に興味はないからと言って、私がメリリッサ公女殿下の話題を出すことすら渋い顔をしていたのに、よりにもよってこんなとんでもない人だっただなんて……

 何度かお話がしたいと伝えても、相変わらず結婚はどうでもいいからと、のらりくらりとかわされた。

 このままでは、悪公女がアクィラお兄様のお嫁さんになってしまうじゃないの。あんなに素敵なお兄様なのに、それは嫌だ嫌だ嫌だ。


 どうにかして破談にならないかと、一生懸命考えてみる。

 そうだ、もし私があの悪公女に苛められたとしたらどうだろうか?優しいアクィラお兄様ならば、きっと怒ってくれるに違いない。

 もしかしたら、追い返してくれるかも?いいえ、それは少し図々しい考えかも知れない。

 けれど、少なくとも悪公女の正体は明かされるだろう。


 だから何とか悪公女に近づきたいと考えていたのに、お披露目のパーティーは成人していないからと出席をさせてもらえなかった。

 身内なのに酷いと抗議したら、イービスお兄様に、お前バレバレだからなと嫌味を言われた。

 だったらと、様子を窺っていたところ、散歩に出歩く悪公女を見つけることができたのだ。


 優雅に日傘をさして歩く彼女の見た目は、私が思い描いていた以上に美しかった。

 若草色のドレスに、金色の髪が太陽に反射して、まるで木々の妖精のようだと感じ少しだけ見とれてしまう。あっ、と気がついた時には木陰のベンチに座ろうとしていたので、急ぎ近くの生け垣に隠れる。護衛騎士と密会なら、それだって弾劾する理由になるわ。


 そうしてどうにか話を聞き取れないかと頭を押し付けている内に、私の方が見るも無惨な状況になり、残念ながらあの悪公女に助けられる羽目になったのだ。


 ただそれは、私の想像していた彼女ではなくって――


「なんで?どうして?皆が言うことと全然違うじゃないの!?」


 彼女は少しも傲慢じゃなかった。汚れた私にとても優しくしてくれた。ドレスを選ぶときの楽しそうなお顔はとても美しかった。


 あんなに綺麗なお姉様、私今までどこでもみたことないのよ!


 頑なに挨拶もしなかった私の方がよっぽど意地が悪いし、醜い心を持っていたと反省をしたわ。

 だからもう一度、ちゃんと正面から会って見たいと思ったの。

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