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キンキラキンにさりげなく

 高い天井から吊される沢山のシャンデリアが、きらっきらに輝き光のシャワーを惜しみなくパーティー会場に降り注いでいた。

 それをこっそりとカーテンの隙間から覗き見して、私は『まあ綺麗』と、目をめっちゃくちゃ細める。

 そして、その細めた目蓋はなかなか元に戻ってこない。


 パーティーへの招待客がぞくぞくと会場入りする中、そこに設置されている大階段の最上部、ビロードの大仰なカーテンで覆われた踊り場のような所で、そんな私とアクィラ殿下はソファーに座っていた。


 階下からは賑やかな語らいの声が上がっている。主役の登場もまだだと言うのに、随分と盛り上がっているようだ。

 沸き上がる笑い声を聞く度に、私の顔はさらに地蔵のように固まっていく。

 そんな表情を見て、アクィラ殿下は綺麗に整った眉をひそめた。


「なんだ、その目は?眠いなどと言ってもらっても困るのだが」


 眠いんじゃなーい!


 むしろ、心臓バクバクで頭はギンギンに冴えまくってるわよ、ちくしょう!

 そうじゃない。私が現実逃避して地蔵になってるのは――


「あの……アクィラ殿下。今日のパーティーは、近しい者だけの、とおっしゃりましたよね?」

「ああ、言ったな」


 顔色も声のトーンも変えずに、平然と返す。


「確か、そこまで大掛かりなものではない、ともお聞きした覚えがあります」


 一昨日の晩餐の場で言われた言葉を、何度も繰り返し思い出す。

 絶対に言ったよね。

 少し前がかり的になりながら、目の前で澄ましているパートナーへと声をかけると、ふっと息を吐いて彼は淡々と答えた。


「なに、大した人数ではない。急なこと故、今王都にいる主だった貴族諸侯とその同伴者くらいしか出席していないからな。いつもの三分の一くらいといったところか」


 三分の一!え、これで?

 私が思い出した例のモンシラ公国舞踏会は、ほぼ全貴族が出席していたけど、今日よりも全然少なかったのに!


 ってか、近親のお披露目パーティーなんて、親兄弟にお偉いさんのプラスアルファくらい感覚でいたわよ……

 人数を聞かなかった私も悪いが、わざと教えなかった殿下も殿下だと、ギロリと睨む。

 そんな私の顔を見つめると、何故か面白いものでも見たとばかりに表情を崩した。


「変な顔だ」


 悪かったわねーっ!

 いやいや、こんな美少女に向かって、変な顔とはどういうことだ?確かにころころと表情が変わった自覚はあるけど、それはそもそも、あなたのせいでしょ?と言いたい。

 ううん、いっそ言ってやろうじゃないかと、アクィラ殿下へと顔を向けた。

 そうして口を大きくあけたところで、私は驚きのあまりそのまま固まってしまったのだ。


 わ、笑ってる……?


 そこには、細めた瞳に口元をほんの少し緩めたようなアクィラ殿下の姿があった。


 黄金の波打つ髪と透き通るような深い海のグリーンを集めたような瞳。

 すっきりとした鼻梁に、それでいて男らしくもある唇が、微かではあるけれども確かに上がった。

 初めて見るその姿は、妙に色気すら感じられる。


 そんな思いもかけない姿を目にしてしまえば、嫌でも胸が跳ね上がった。何せアクィラ殿下は、嫌みな言動はともかくとして、見た目だけでいえば、超がつくほどの美形なのだ。


 ロックス殿下(エロガッパ)がスポーツマンタイプというなら、アクィラ殿下はまさしく完璧な王子様タイプだった。


 正直言って私はメンクイという訳ではない。そもそも一人で生きていくことだけを考えて育って来たために、男に夢は持っていなかった。

 けどそんな私のポリシーをもひっくり返しそうになるくらいの破壊力だったよ、アクィラ殿下の微笑みは。


 イケメン怖ぃい!


 ぷるりと震える私に向かい、また真顔に戻ってしまったアクィラ殿下が事もなげに言い放つ。


「どうせ来月には結婚の儀式で全貴族が揃う。その前に少しでも皆に顔を売っておけ」

「っ……は、はい」


 どうやら今日の催しは、私の顔つなぎのつもりのパーティーのよう、らしい。多分、だけど。

 アクィラ殿下という人は、口は少々悪いけれど、もしかしていい人なのか?

 そんなふうに考えていると、彼の左手が私の耳もとへと近づいた。


「ひっ……うえっ!?」

「まあ、そこまでキンキラキンに飾り立てていれば、立っているだけでも目立つだろう」


 そう言うと、グリーンの大ぶりな宝石が付いたイヤリングを指ではじく。


 キ、キンキラーっ!?そんなど派手にした覚えはないわよ!

 そりゃあ、ミヨはちょっとばかり張り切りすぎたかもしれないけど、バランスは考えたんだからね。あと、痛いじゃない!


 むかっとして、その手を叩き落としてやろうと思い、右手を上げると、それはそれはとても自然にさりげなく、その手を取られた。


「は?」

「さあ、そろそろ行くぞ。用意はいいな」


 気がつけばソファーから立たせられ、私の腰にはアクィラ殿下の手が置かれていた。


 凄いな、本物の王子様は。


 一瞬呆気にとられつつも、アクィラ殿下のその言葉に気合いを入れ直し、ドレスの座り癖を直す。

 さりげなく、ゆっくりと。私はアクィラ殿下の横につき、ビロードの重いカーテンが開かれるのを待った。

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