夏休み?の男子高校生の話
「夏休みってさ…………いや、やっぱいいわ」
「そこまで言っといてそれはないだろ。夏休みって?」
「んー、いやさぁ……」
「なんだよ」
「……その、さ。高校一年の夏休みってもっとこう……」
「オーケー、分かった。もうやめろ」
「もっとリアルが充実してる感じなんだと思ってた」
「やめろっつったろバカッ!!」
「……とりあえず涙拭けよ。……つーかあれだよな。せめて何か部活くらいは入っておくべきだったか? むしろ部活に入ってないのが全ての元凶な気がしてきたわ」
「バスケ部に入部して三分でやめさせられた奴が何言ってんだ?」
「しゃーないだろ。女バスに可愛い先輩いたからアタックしてみたらキャプテンの彼女だったんだよ」
「なにそのちょっとした修羅場」
「やっちゃったもんはしゃーないからいっそ男なら最後までやってやろうと思ってグイグイいったらキャプテンにバスケやめるか人生やめるかの二択突きつけられてさ」
「前々から思ってたけどお前バカだろ?」
「バスケ部マジぱねーわ。ほんと筋肉ぱねーの。首の骨折れるかと思ったわ」
「人生やめる方選択したのかよ……」
「ヤるか殺られるかの死闘だったな」
「何もうまくねぇからどや顔やめろ。つーか何がお前をそこまで突き動かしたんだよ……」
「性y……バスケをやめるなんて安西先生に申し訳なくて……」
「もういいよ。ほとんど言っちゃってたし言い訳もくそ過ぎるからもういいよ。というかバスケをやめるとか以前にやったことないよな? 始める前にやめたよな?」
「バカなキャプテンだぜ。俺さえいれば甲子園に行けたかもしれないものを……」
「バカはお前だしそのくそみたいな自信はどこから湧いてくんの? 便器とか?」
「その怒濤のくそ押しやめよ?」
「悪い、便器はお前が生まれた場所だったよな」
「お前は知らなかったかもだけど実は俺人間なんだよなぁ」
「便器と人間のハーフとか斬新だな。人間の方が優性の遺伝子だったのか?」
「便器を劣性遺伝子みたいに言うのやめろ。そもそも人間と人間の間に生まれた生粋の人間だし。……生粋の人間ってなんだよ」
「知らねーよ。つーか、なんか面白いことないの? いい加減お前なんかと毎日会うのも飽きてきたんだけど」
「お前それ家に呼んだ奴に対してのセリフじゃねぇよ。片道三十分チャリこいで毎日来てやってる俺にもっと感謝しろよ」
「暇かよ」
「ぶっ飛ばすぞ」
「……映画でも見に行くか」
「……バカみたいに唐突だな。まぁいいけど。なに見に行く?」
「え? お前と行くなんて一言も言ってないんだけど……」
「この距離で誘わないとかお前のメンタルなんなの?」
「もういいからお前帰れよ」
「酷すぎない?」
「やっぱりバケモノの子かなぁ~」
「聞けよ。そんでなんでそのチョイス? いや、良い映画だとは思うけどね、それなりに前の映画じゃん? もっと最新作みたいな奴をさ……」
「てめぇ、バケモノの子をバカにするなら容赦しねぇぞ!?」
「お前はバケモノの子の何なの!?」
「昨日初めてテレビで見て感動した」
「超ビギナーじゃねえか!」
「お前は良いよな。鏡見たらいつでもバケモノの子が見れて」
「ぶっ殺すぞ。誰の顔がバケモノの子だ。うちの両親に地面に額こすりつけて謝れ」
「あー、でもやっぱ外出るのめんどくさいな」
「勝手が過ぎる」
「いや、だってさ。外とか絶対くそ暑いじゃん?」
「お前はそのくそ暑い外で毎日三十分人にチャリこがせてるんだけどな。今日とかマジで死ぬかと思うくらい暑かったぞ。ここに来るまでに何人か制服姿の学生見たけどぶっ倒れそうな顔してたし」
「へぇ、そりゃご苦労…………ん?」
「……? どーかした?」
「いや……制服姿の学生が歩いてた……?」
「……うん。それがどーかしたか?」
「……な、なぁ、今日って何月何日だ?」
「八月三十一日だろ?」
「……学校っていつからだっけ?」
「…………」
「……たしかさ、夏休みの日数が台風で一日減って八月三十日から学校じゃなかったっけ……?」
「……ははは」
「……アハハ」
「「夏休み終わってんじゃねえか!!」」




