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短編集

喫茶店にいったら元カノがウェイトレスだった件。でもそれより看板犬の方が気になる。

 皆様、年末どうお過ごしでしょうか。

俺は会社の忘年会も無事に終わり、一人ダラダラと究極の怠けを開発すべく努力しております。

 

 年末と言えば、俺のイメージでは大掃除……だが、俺は掃除という物が大の苦手だ。

何故かと言えば超めんどい。おかげで俺の部屋は、必要な物がすぐ手に届くというシステムが出来上がっている。悪く言えば物が散らかっている。

 かなりやんわりと伝えたが、皆様の頭の中で浮かんでいるイメージの十倍は汚い。足の踏み場が無いというのはかなり優しい言い方だ。俺の場合、足の踏み場は散らかってるゴミだったりする。


 自分でもこれはヤバい……と思いつつも、どうしても掃除が出来ない。

 そのおかげで、元カノにも愛想をつかされフラれてしまった。


「来年の目標は……部屋の掃除をする……だな」


 つまり今年はしないという堕落発言。いい加減にしないと妹が我がマンションに突撃してくるだろう。まだ俺のマンションが人が住めるレベルなのは、ぶっちゃけ妹のおかげだ。俺は今年で二十五になるが、大学生の妹に部屋の掃除をしてもらうという……ザ・ダメ兄貴を貫いている。


「むむ……早速妹からメールが……何々……部屋のシャメおくれ……」


 だが断る。と返信。すると今すぐ行くという兄思いな妹の返事が。

あぁ、やばい……また怒られる。ガミガミ叱られてしまう! まあ仕方ない。全て俺の責任だ。いや、マジで。




 ※




「なんじゃこのゴミ屋敷はぁぁぁ!」


 メールから三十分後。妹が我がマンションを訪れ発狂。ゴミ屋敷て。まあ否定はせんが。


「しろよ! せめて否定しろよ! 去年掃除してあげたのに……なんで一年で……一人でこんなに汚せるかなぁ……」


「それこそ神のなせる業……妹よ、君の兄は神の領域に達しているのだよ」


「うるさいボケ。さっさと掃除道具出せ」


 掃除道具……あぁ、確かベランダに……


「何でベランダ?! っていうかベランダもあり得ないんですけど! なんでアマ〇ンの空箱こんなところに放置しとくの! っていうか洗濯物とか何処で干してるの?!」


 ふふふ、妹よ。コインランドリーという画期的な物がこの街には……


「勿体ない! まさか毎回コインランドリー行って洗濯して乾かして……あんたの部屋の洗濯機は何のためにあるんだ! あれはちょっと変わった置物か!?」


 うむ、鋭いな、我が妹よ。


「勿体ない……ここ掃除して私が住むから。兄貴はさっさと実家帰りなよ」


「それは出来ぬ相談だ。社会人は独り立ちすべきという母の考えの元、実家から出てきたというのに」


「その実家から三十分で行き来できる距離だけどね、ここ……」


 仕方なかろう。だって会社がこの近くなんだから……。


「まあ掃除始めるよ。お昼おごりね」


「うむ、では俺は部屋でゲームでも……」


「てめぇもやるんだよ! ぶん殴るぞ!」





 ※





 流石は我が妹、と言わざるをえまい。ものの数時間で、あのゴミ屋敷が……床一面観察できる部屋になった。


「残念だけど、それが当たり前ってもんなのよ。じゃあ一休みしたら……昼飯いこうぜ」


「どうでもいいけど、実家は大丈夫なん? 年末の大掃除とか……」


「ゴミ屋敷に住んでた奴がそれ言う? そんなのとっくに終わってるって」


 流石だ、我が妹よ。じゃあ昼は何が食べたいんだい? なんでも奢ってくれようぞ。


「んー……ダイエット中だし軽いのでいいけど……」


「ダイエット? 全然太ってないだろ。むしろもっと食えよ。よし、ステーキハウス行くぞ」


「絶対ダメ! お正月に親戚連中集まってスキヤキとかするんだよ?! それだけでもブクブクになっちゃうっていうのに!」


 あぁ、毎年実家に親戚集まってご馳走するもんな……。ちなみに俺も正月は実家に帰る予定だ。そしてたらふくゴチになる。


「そういえば妹ちゃんよ。お年玉はいくら欲しいんだい?」


「いや、大学生だから。そんなんいらんわ」


 そんな事言わないで! お兄ちゃん寂しい!


「じゃあ初売りバーゲンに付き合ってよ。私の好きなブランドの福袋買っておくれ」


「いいだろう。ちなみにそれいくらくらいなん?」


「五千円くらい」


 むぅ、もっと欲出せよ。お兄ちゃん独身貴族だからもっと妹に貢ぎたい。


「そんな事してると母上にまたどやされるよ。早く結婚しろって……。岬ちゃんにも愛想つかされてフラれちゃって……どうすんの? あんないい人中々居ないよ?」


 藤堂 岬……それが俺の元カノの名前。

まあ確かに……こんな俺と三年も付き合ってくれたし……


「ふむ……じゃあ兄上よ。喫茶店いこうぜ。ここから車で十分くらいの」


「まあ……君がいいなら俺は構わんが……」


 こうして俺は妹と共に愛車で……その喫茶店へと向かった。

まさかそこで……あんな衝撃的な出会いが待ってるとも知らずに……。




 ※




 俺の車で妹ご所望の喫茶店へ。木造でペンションみたいな作りの喫茶店だ。店先のイーゼルには、日替わり定食のメニューが書き記されている。


【注意:イーゼルとは、店の前に置いてある看板みたいな奴です(超適当説明)】


 妹と共に喫茶店へと入店。店員に大人二人、と伝えつつ窓際の席へ。

流石に年末だからか、そこまで人は入ってないな。快適でござる。


「いらっしゃいませー、ご注文は……って」


「ん?」


 その時、注文を受けに来るウェイトレスを見て絶句する俺。

バーテン服のようなオシャレな服装にエプロンを付けた……ブラウンの髪色のショートボブ女子。


「ご、ご注文は……? お客様……」


 やばい、滅茶苦茶微妙な表情で接客してくる。

何を隠そうこの女子こそ……藤堂 岬。俺の元カノ……。


「ぁ、岬ちゃん、私日替わりランチのAコースでー」


 ってー! 妹! 何普通に注文して……っていうか確信犯か!


 妙にニヤニヤしながら注文を言い放つ妹!

くそ……やられた……! 


「……で……お前は?」


 って、ぎゃー! 店員にお前は? って注文聞かれたの初めてだわ!


「同じの……」


「はい、少々お待ちください」


 そのまま奥へと引っ込んでいく岬。

うぅぅぅ、妹ちゃんよ! どういうこったい!


「テヘペロ」


「あぁぅぅぅぅ……お兄ちゃんのHPはもうゼロよ……っていうか岬可愛くなってるぅ……」


「未練タラタラじゃん。ほら、ヨリ戻しなって」


 無理だ……無理に決まってる!

あんなに可愛くなってんだから! 絶対新しい男居るって!


「ところがドッコイ。安心せられよ。私、岬ちゃんとLUNEやってるけど、今フリーって言ってたよ」


【注意:LUNE コミュニケーションアプリです】


「おま……ちゃっかりそんな仲に……仲いいのか?」


「そりゃもう。先週も会って一緒に買い物してた」


 元カレの妹と?! 

そ、そんな友情ありえるの?!


「岬ちゃんだから有り得るの。これだけでも分かるでしょ。岬ちゃんみたいな人は……この世に一握りよ! あんな素敵な女性を逃がした兄上は愚かとしか言いようがない」


「ぐふ……御尤も……」


 しかしヨリを戻すなんて不可能だ。

だって……さっきの応対で大体分かっちゃったもの!


『お前……なにしてんの?』


みたいな目で見てきたもの! もう耐えられない!


「何少女漫画のモブみたいな事言ってんの。まあ、岬ちゃん、結構兄貴の愚痴多いけど……それって逆に言えば気になってるって事じゃない? きっと心配してるんだよ。ゴミ屋敷で暮らす兄貴の健康状態が」


 俺は健康そのものだぞ。あんな部屋に住んでるが、不思議とここ数年……風邪曳いた記憶が無い。


「まあ、一年に一度は掃除してるしね。私が」


「ぐふ……」


 それから十分程経ってから、別の店員さんが日替わりランチを持ってきてくれた。むむ、イケメン店員だな。このお兄さん、絶対岬の事狙ってるな!


「いただきまーす」


 ニコニコと満足そうにランチを食べ始める妹。

まあさっさと食って去ろう。岬も元カレが妹と一緒に職場に来てるなんて苦痛だろうし……。


「フンッ!」


 その時、俺の足元から何やら……モソモソと感触が。

ん? なんか……居る?


 そっと机の下を覗くと……そこには……


「ワフッ」


「ん?! 犬……?!」


 小さめの柴犬が机の下から現れた!

俺の座るソファーの隣へと昇り、そのまま鎮座。日替わりランチをジ……と見つめている!


「ちょ、妹ちゃんよ、この犬何?」


「ぁ、看板犬のモコ。ちなみにこの喫茶店の名前は……モコモコ」


 なんて適当な。

というかモコちゃん可愛い……え、この子……大人しいな! 凄い飯食いずらいけど!


「な、撫でてもいいのか?」


「いいと思うよ。でもご飯はあげちゃダメだよ。モコちゃんには味濃すぎるから」


 ふ、ふむ。

でもご飯食べたいんじゃないのか? 可哀想でござるよ。


「ぁ、すみませーん、モコちゃんのオヤツくださーい」


 そう妹が注文すると、岬がオヤツっぽいのを持ってきた。

俺と目があうと嫌そうな顔をするが、正直……今はどうでもいい。俺の心はモコちゃんに奪われている!


「モコちゃん……たべる?」


 岬から受け取ったサラミっぽいオヤツをモコちゃんの口元へ。するとはぐはぐ食べだした!


ぎゃぁぁああ!! かわゆい! モコちゃんかわゆい!


「落ち着け兄上。今、岬ちゃん凄い顔してたよ……」


「あん? そんなんどうでもいいわ。俺は今、モコちゃんを観察するので精一杯よ」


 そっとモコちゃんの頭を撫でてみる。

おぉぉぉ、毛……柔らかい、フサフサ……柴犬特融のきつね色の毛が……もこもこ……


「兄上、顔が凄い気持ち悪い。いいから自分のご飯食べなさいよ」


「ぁ、あぁ、いただきます……」


 ちなみに日替わりランチは豆腐ハンバーグにサラダスパ。窯焼きパンに卵スープ。そしてデザートに杏仁豆腐もついている。


「これホントに豆腐ハンバーグか? 肉としか思えん……」


「そうそう、ここ美味しいの」


 するとモコちゃんが、俺の膝へと……あご乗せしてきた!

ぎゃあぁぁあ! やばい、やばい! 膝が暖かい! そしてモコモコの感触が! モコちゃんだけに!


「可愛いなー、この子……たまらん」


「兄貴ってそんな犬好きだっけ……」


 まあ自分から飼おうとは思わんけど……あんな部屋だったし……。

でも別に嫌いじゃないぞ。ランニング中にサンポ中のワンコみたら撫でたくなる。


 そしてモコちゃんは、あろうことか俺の膝に頭を乗せながら……お腹を見せてくる!

ひやぁぁぁぁ! やばい、これはやばい! 思わずお腹を撫でてしまう俺!


 あぁ、柔らかい……なんて天国……


「兄貴、モコちゃんに夢中になってないで……ほら、岬さんの事を気にしてあげなよ。これみよがしに、さっきのイケメン店員と仲良く喋り出したよ」


「あぁ? あぁ、そうだな」


「軽っ! 軽すぎる! いいの? 岬ちゃん取られちゃうよ!」


 いや、まあ……そうなんだけど……って、モコちゃんが俺の手をペロペロしてきたぁぁぁ! 

いやぁぁあぁ! かわゆい! よーしよしよしよし! 撫でまわしてくれる!


 あぁ、ここが天国か……。

モコちゃんは俺の膝へ寝そべりながら、俺の手へ前足の肉球を押し付けてくる。

にゃんてこった……肉球をぷにぷにしてもいいと?! じゃあお言葉に甘えて……


「お客様……申し訳ありませんが……看板犬へのセクハラ行為は止めてください」


 その時、岬がなんか凄い形相でそんな事を言ってきた。

むむ、セクハラ行為とな……俺はただ、モコちゃんをモコモコ、モフモフしてるだけなり! 断じてセクハラではない!


「そんなニヤついた顔でモコちゃんモコちゃん連呼して……」


むむ、文句あるか。

可愛いんだから仕方ない。


「何……それ……」


 その時、岬が何か凄い不満そうな顔に……


「私だって可愛く甘えてたのに! モコのお腹は簡単に触って! 私には何一つ手出してこなかったくせに!」


 ……え?

何言ってんの、コイツ。


「あの、兄上……岬ちゃんが兄上と別れたのは部屋が汚いからじゃないんだ」


あぁん? じゃあ何が理由で……


「兄上の部屋に不満があるなら……部屋に招かれた時点でお別れするでしょ。岬ちゃんが気にくわなかったのは、三年も付き合ってて兄上が全然……むぐ!」


 その時、我が妹の口を塞ぐ岬!

我が妹に何をする!


「うるさいうるさいうるさい! 犬に負けた! ワンコに負けた……うわぁぁぁぁん!」


 そのまま岬は奥へと引っ込んでいく。

なんだったんだ、一体。


 モコちゃんも俺から離れ、そのまま別の客が持つオヤツへと直行していく。

むぅ、モコちゃんが取られた。


「というわけで兄上。岬ちゃんに、もっかい告ってヨリを戻すんだ」


「無理だ……俺はもう、モコちゃんの事しか考えられない……」


「いやいや、犬に嫉妬してる岬ちゃん見たでしょ。まだ兄上の事が気になって仕方ないのだよ」


そんな事いわれましても……あぁ、モコちゃん可愛い……


「まさか犬が恋のライバルになるなんて……岬ちゃんも思っても無かったろうに……」





 ※





 ランチを完食し、お会計を。

レジには先程のイケメン店員。むむ、こいつ、イケメンのくせに感じいいな。爽やかボーイだ。


「あの、お兄さん……」


「ん? どうした、爽やかボーイ」


 イケメン店員は、俺の手を包むようにおつりを……って、何? 男に手包まれたの初めてだわ。


「岬さんの……元カレなんですよね……」


「ぁ、あぁ、そうだけども……君、もしかして岬の事狙ってるの?」


 コクン、と頷く爽やかボーイ。

おお、なんか可愛い。応援したくなってくる。


「気をつけろ……あいつはヒステリックだぞ。ちなみに君……何歳?」


「19です……」


若い! 未成年! 岬の奴め! こんな若人を誘惑しているとは! けしからん!


「あ、あの! お兄さん、岬さんとヨリ戻したり……しないんですか?」


「あぁ、俺はモコちゃんに一目惚れしてしまったから……それはいいかな……」


 やばい、妹の視線が痛い。何言ってんだコイツ……と言わんばかりだ。


「岬さん、お兄さんの事……凄い気にしてるみたいで……出来るなら岬さんの事応援してあげたいけど、僕も岬さんの事……」


 なんて可愛い爽やかボーイ!

大丈夫だ、俺はアイツに愛想つかされてるから! 俺の事気にしてる云々はきっと気のせいだ!

気にせずアタックせよ!


 躊躇いがちに頷く爽やかボーイ。

岬の奴め……モコちゃんや爽やかボーイの居る……こんな素敵な職場で働いてるとは。なんてけしからん。


「じゃあな、爽やかボーイ。頑張れよ」


 そのまま喫茶店を後にする俺と妹。

チラっと店の窓を見ると、モコちゃんが他の客に撫でられているのが見て取れた。


「モコちゃんいいなぁ……また来ようかなぁ……」


「兄上……そんな事言ってると、あのイケメン店員にホントに岬ちゃん取られちゃうよ」


「別にいいだろ。あの爽やかボーイ気に入った。正直岬より可愛い」


「いやいや、ボーイズラブはいいから。岬ちゃん気の毒に……」


 そのまま車に乗り込み、店の敷地から出て行こうとした時……前方に岬が飛び出してきた!


って、うおおおい! 危ない! 車の前に飛び出すな! 小学生でも知っとるわ!


「ちょ……お前何してん!」


 窓をあけて岬に怒鳴る俺。

すると岬は、俺の傍まで来ると


「……バーカ!」


 そんな事を言ってきた。


「……え、何、ちょっと岬サン?」


「私は……あんたの事が好きで……好きでしょうがないんだから! なんでモコに心奪われてんのよ! 極めつけに守君にも何吹き込んでんのよ!」


 守君? あぁ、あの爽やかボーイか。

しかしそんな事をいわれましても……。


 そのまま岬は俺の車の前に立ち、両手を広げて通せんぼしてくる!


「帰るなら……私を轢いてから帰って!」


「何を1〇1回目のプロポーズみたいな事してんだ! どきなさい!」


「兄上! それ伏せ字になってるか微妙だぞ!」


 ええい、岬のわからずやめ!

俺に愛想つかせてフったのはそっちだろうに!


「そうだけど……そうだけども……私はずっと待ってたんだから……! あんたから……その……」


「なんだと……待ってたって……まさか……」


 そうか、岬の奴……俺のアレを……待っていたのか。


「兄上、念のため確認するが、岬ちゃんが待ってたというのが何か分かってるのか?」


ん? それはアレだろう。っていうか、俺……既に指輪まで買って言おうとした直後にフラれたからな。


「……へ?」


「ん?」


 岬と妹ちゃん、両方ともが唖然とする。

ちなみにその指輪は俺の車に……入れっぱなし……。

 そういえば岬にフラれたショックで忘れてたわ。


「岬、俺にもちっぽけなプライドはある。これを渡そうとした日の夜にフラれた男の気持ちも考えてみろ。正直、めちゃくちゃ泣いたわ。それでもやっとここまで立ち直れたんだ。なのに今更好きだったとか言われても……」


 岬は呆然としながら、トボトボと店の中へ帰っていく。

うむ、相当利いたな、あれは。


「ちょ、兄上……今の話、本当なの?」


「当たり前だ。じゃなきゃ指輪なんて買わんわ。っていうかどうしよ……もう捨てるか、この指輪……」


「モッタイナイ! っていうか兄貴……! ちっぽけなプライドを持つ兄貴!」


 なんか妹が俺の心を抉りながら、深々と頭を下げてくる。なんじゃ、妹よ。


「こんな結末は嫌だよ……二人の縁がこれで本格的に別れちゃうなんて嫌だよ! どうか……どうか! 岬ちゃんを私のお姉さんにしておくれ……!」


「…………」


 そのまま俺は車を降り、喫茶店の中へ。

スタッフルームへとズカズカ入り、岬の元へと。


「え? 何……」


「五月蠅い」


 岬を逃がさまいと、壁に手をついて顔を合わせ……ってー! 何気に俺、壁ドンしてるやん! 不味い……急に恥ずかしくなってきた……


「何っ? 何?」


「俺は納得してない……納得してないけど……可愛い妹がお前がいいって言ってる。だから俺は……お前を選ぶ」


 指輪を箱から出し、そのまま岬の指に……って、入らない! お前、太った?!


「し、失礼な事言わないでよ! 入る……入るから!」


「ああもう、小指でいいから! とりあえず入れろ! 恰好つかん!」


 そっと小指へと指輪をはめる岬。


「俺は……全然納得してない。正直これはプロポーズでもなんでもない。でも俺にも落ち度はあったんだろう、だから……」


「だから……?」


「守君も交えて……健全に三角関係を築いていこう」


「……はい?」



 こうして俺は……自ら進んで三角関係を築き上げた。



なんだ、この終わり方……すんません……

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― 新着の感想 ―
[良い点] モコちゃんがとてつもなく可愛かったです そして守くんの当て馬感が悲しく最高でした [気になる点] 終わり方………ッ!! え、ここでキレイに終わらないって、主人公、あなた……、あなた……!!…
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