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相棒幼女と着替え

 私とアイリが討伐目標のいる森へ到着する頃には、空からは雪が降り出していた。

 外縁で魔工馬を降りて森の中を見通すと、雪が溶けずに積もっている。積雪は五十センチといったところか。


「これは歩きでは無理ね。グレン、スキー板を出して」

「ああ、だがその前に着替えよう」


 私は魔工馬の後部に積載した荷物から、白い上下の服と外套、帽子を取り出した。雪中での偽装用である。アイリの髪は真っ白だから偽装という面では帽子は必要ないかもしれないが、耳当て付の帽子は防寒の為に必須だ。


「…そこまでする必要あるかしら?」

「紅鋼熊が色をどの程度判別出来るかは分からないんだ。迷彩効果もあった方がいいだろう」

「まあ、それもそうね。ただの動物と魔獣でも違うでしょうし。…グレン、壁になって」


 アイリが着替える服を持って近付くので、私は外套の前を開いて迎え入れた。私が外套で簡易天幕を作る形となり、アイリはその中で着替え始める。脱ぐのは一番外に着ている茶色い厚手の服だけであり、内衣は脱がないので下着は見えない。少し残念だ。

 などと考えながら見ていると、アイリがジト目で見上げてきた。


「…女の子の着替えをあまり注視するものじゃないわ」

「下着すら見えないのだからいいだろう?」

「…下着どころか裸でも遠慮なく見るじゃない、貴方」

「大丈夫だ。アイリ以外にはちゃんと遠慮もしている」

「……まったく、もう」


 アイリは諦めたように言うと着替えを続けた。内衣は着替えないはずであったのに「汗をかいたから」と言って内衣も脱ぎだし、下着姿となる。白だった。家で着ているおしゃれな下着ではなく、動き易さと丈夫さを重視した簡素なものだが、これはこれで良い。


--魔工馬の上でもずっと私に抱えられていただけなので殆ど汗などかいていないだろうから、これは彼女のサービスなのだろう。本当に優しい。


 着替え終えたアイリは、元々肌が白いこともあり全身真っ白となった。この上から白い外套を羽織って雪中に紛れれば視覚で見つけるのは困難になるだろう。

 アイリに続いて私も手早く着替え終えると、武器である魔法杖や剣にも白い布を巻き付けた。背中に背負う背嚢にも同様の処置をする。

 更に魔工馬にもシーツを使って一応の偽装をした。魔工馬は森の外縁に置いていくことになるため、目立たないところに隠しておく。魔力認証があるのでそう簡単に盗むことは出来ないが念のためだ。


「…行くか」

「ええ」


 準備を終えた私達は森の中へと進み出した。私は背嚢を背負い魔法杖は負い紐を使って体の前に提げる形で、アイリは魔法杖を背中に負う形でそれぞれ両手にスキーのストックを持ち、立ち並ぶ木々を避けながら雪の上をスキー板で前進する。


「今更だが、本当に此処に紅鋼熊なんていう希少種がいるのか?」

「…本当に今更ね。近隣の村の住人が複数回目撃しているわ。真っ赤で大きな熊といえば他にいないでしょう?目撃場所が少しずつ村に近付いているらしいわ」

「…それは、その村の住人は夜も眠れないな。紅鋼熊なんてものがやってきた日には村は全滅だ」

「まあ、本当に村の近くまで来たらさすがに王国軍が出るでしょうけどね」


 そんな会話をしながら討伐目標の痕跡を探す。一面が雪で踏み荒らされてもおらず、足跡を探せばよいため普段より楽ではある。

 森の奥へ進むことしばらく、私達は雪上にそれを発見した。


「…見つけた、馬鹿でかい熊の足跡だ」

気心が知れていて傍で着替えもしてくれる対等の女の子とか良いと思います。

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