相棒幼女を抱きしめながら乗馬
しばらくは毎日投稿しようと思ってます。
家で必要な準備を終えた私達は、討伐目標がいる東の森を目指して出発した。歩いて行けば日が暮れる距離であるため魔工馬に乗ってである。
王国軍の払い下げ品であるこの魔工馬は、旧式だが造りが非常に頑丈で気に入っている。操縦のクセも強いが慣れてしまえば民生品の魔工馬より断然乗りやすい。一般人が騎乗することを想定した民生品だと安い量産品なら生きた馬の半分の値段で買えるが、そういったものは路外走行をあまり想定しておらず、荒れた道を走るとすぐにガタが来てしまうのでこのような魔獣討伐には不向きである。
東の森へ続く道には数日前に降り積もった雪が残っており、遮るものの無い平野に吹き荒ぶ冷たい風が魔工馬で走る私達の体温を奪っていく。
「…ちょっと、変なところ触らないで」
「変なところって、お腹はセーフだろ?」
「触り方がいやらしいって言ってるの。何で揉むのよ?」
「……すまん、手が勝手に…」
そう、今私達は1体の魔工馬に私がアイリを抱える形で騎乗しているのだが、彼女のお腹に回していた左手が勝手に動いたらしい。これはいけない。アイリ相手ならともかく、こんなことをしていてはそのうち衛兵に捕まってしまう。
「私相手だからって許されるわけじゃないわ」
「…お前、本当は読心魔術を開発したんだろ」
「グレンが分かりやすいだけよ」
そんなはずはない。これでも職場では「厳格な鬼教官」で通っているのだ。割と頻繁にエロいことを考えているこの頭の中がバレていたらそんな評価は得られないはずだ。
アイリは「…はぁ」とため息を一つ吐くと体の向きを変え、私と向かい合う形となった。何をするのかと思えば、彼女は私の外套の前を空け始めた。冷たい風が外套の中に入ってくる。
「…おい、寒いんだが?」
「少しくらい我慢しなさい」
外套を開いたアイリはそのまま私の懐の中に入ってきて首に腕を回し、抱きついて来る。まるで南方大陸に生息するコアラのようだ。
「早く外套のボタンを閉めなさい。寒いじゃないの」
「いや、なにをやってるんだ?」
「グレンが他所で痴漢でもして衛兵に捕まらないように、私が一肌脱いであげてるの。仕方ないから私の感触で我慢しておきなさい」
「…自分が寒いだけだろう?」
「なによ、貴方だって暖かくなるのだからいいでしょう?」
確かに暖かい、そして柔らかい。良い匂いもする。悔しいがアイリの言うとおりだ。大人しく受け入れ感謝しよう。私はアイリの背中を覆う形で外套の前を閉じた。
そんな風に互いの体温を感じながら魔工馬を走らせること数時間。私達は目的地である森へ到着した。