家猫マロニー君
私は方向音痴です。
よく、兄弟の中で野生では一番生きられなさそうと言われます。
マロニーは家猫なので、心配ないですけどね!
これは、ある裕福な家庭で育った一匹の家猫のお話です。
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彼は家主の友人宅から里子としてもらわれたマンチカンの雄猫でした。
名前は透き通るような毛皮と細い体躯からマロニーと名付けられました。
性格はのんびり屋さんでおとなしいです。
マロニーは似合わない赤いスカーフがお気に入りで、毎朝つけてもらいます。
そんな彼がこの家に来てからちょうど半年がたったある日のこと
「母さん!マロニーが帰ってこない!」
と女の子の声がこの家に響き渡りました
「えぇ!ちゃんと探した?お父さんのベッドの下は?」
「どこ探してもいなかったの!」
そうして、一家による大捜索が行われてるとはつゆとも知らず
マロニーは見知らぬ風景に戸惑っていました。
そう
マロニーは迷い猫真っ最中だったのです。
「んにゃ?何でおねえちゃんのにおいがしないにゃ?」
見渡す限り、ここはマロニーの知る場所ではありません。
ぽてぽてと歩くのに夢中になっているうちに、お散歩コースを外れてしまったのです。
にゃーにゃー鳴いてみても、誰も見向きもしません。
「おかしいにゃ。いつもにゃら、お母さんがきてくれるにゃ。おかしいにゃ。」
そうやって鳴いていると、なにやら子供の集団の声がしました。
「ねぇねぇ!ねこちゃんのこえがするよ?」
「ほんとだ!さわりにいこ!」
「いいね!」
「えー、ぼくねこあんまりすきじゃないんだけど」
「いいじゃん!いこいこ!」
マロニーにとって子供というのは恐ろしいものです
子供でなくとも、猫の扱いになれていないものは遠慮したいと思うでしょう
事実、半年前のお姉ちゃんはマロニーを可愛がるつもりが、マロニーにとってはいじめられてると感じる扱いでした。
さわりかたもだっこのしかたも下手くそで、いつ落とされるか、怪我をするかとひやひやします
マロニーは鳴くのをやめて隠れることにしました。
「あれ?ねこちゃん?」
「にげちゃったかな?」
「ねこちゃーん」
「もうかえろうよ」
「ほら、あんたもさがすのよ!」
どうやら逃げ切ったようです。
ほっとしたマロニーはお昼寝をするために早く家に帰りたいと思いました。
おやつの時間も過ぎています。
毎日欠かさず食べていたので、お腹がすいてきました。
その時です
「お前、にゃにしてんだ?どこからきたにゃ」
別のねこの声にマロニーが振り向くと、真っ黒な猫がいました。
「お前、野良じゃねぇにゃ。にゃんだ、捨てられたかにゃ?」
「家を探してるにゃ。おねえちゃんがまってるにゃ」
「にゃんだ。ただの迷子かにゃ。」
迷子という言葉はマロニーの心を暗くします。
「にゃにゃ…ここは、どこだにゃ?」
「ここは…人間がいうところの裏道にゃ!にゃ?横道だったかにゃ?
…んにゃ!道にゃ!とにかく、道にゃんだにゃ!」
マロニーは内心使えないと思ってしまった
それが顔に出てたらしい
「んにゃ?にゃんだそにょ顔は?ムカつくにゃ!」
そういうと、とびかかってきた
マロニーは、避けることもできず、地面に張ったりと倒れた
満足したらしい黒猫はそのままどこかにいってしまいました。
倒れたマロニーはぼんやり空を眺めました。
お腹がすいてお腹がすいて仕方の無いマロニーは、そのまま動けずにいたのです。
「にゃぁ…お家、帰りたいにゃ…」
そのまましばらくして、空は青からオレンジへ、オレンジから紺へと変わる頃、重たい足音が近づいて来ました。
人間の足音のようです。
マロニーは嗅いだことのある臭いになんだか動けずにいました。
「あら?あなた、渡仲さんの家のマロちゃん?お家の方が探してたわよ。ほら、一緒に帰りましょうね」
なんと、隣人の乙成さんでした。
乙成さんはマロニーを慣れた手つきで抱き抱え、ゆっくりと歩き始めました。
歩きながら、
お姉ちゃんとお母さんが顔を真っ青にしながらマロニーを探していたこと
乙成さんの家にマロニーが来ていないか訪ねられたこと
お父さんが早退したことを聞いた
ずいぶん心配させてしまったと、マロニーは思ったけれど、それよりもお腹がすいていた
乙成さんに頭を撫でられながら、マロニーは心のなかでしばらく外には出ないことを決めた
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「マロニー?!どこ行ってたの!」
「にゃ~(お腹すいたにゃ~)」
「もう、心配したんだよ?」
「にゃん…(おやつくれにゃ…)」
「マロニー、怪我はないか?ずいぶん泥だらけじゃないか!野良にいじめられたか?」
「にゃ!(臭い!)」
マロニーは安心して、もうおやつのことしか考えられなくなってしまいました。
家族も安心して、マロニーの毛をとかしたり、おやつをやったり、一緒にお昼寝しました。
マロニーは、やっぱり、お家が一番にゃ!と、思うのでした。
マロニーは生粋の家猫である
一度だけ遠出をしたことはあるが、家より快適な場所は他にないと、大きくなり子供ができると、子供にそう教えたのかもしれない。
書き始めた時は面白い案だと思ったのですが、オチがなかなか思い浮かばず、久しぶりの投稿となりました。
私、野良猫は見かけるのですが、野良犬は見たことないです。
フィクションです。
感想待ってます。
<起承転結>
家族のマロニー捜索
家猫マロニー迷子発覚
助けてくれると思った野良猫は助けてくれない!
結局おとなりさんが助けてくれる
めでたしめでたし