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マジカルエンジンで世界征服!  作者: 山犬ごん
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第3話

人は漏れなく転移者をリンチするということは、目の前の彼も危ないのか?

「君は嬉しそうに見えるけど、俺を殺したいと思わないのか?」

「ああ、私は人じゃなくてエルフだからね、恨みや危機感は無いよ。それどころか非常に嬉しい。知らないことを求めて旅をしているものでね、私の方も色々と話を聞きたいんだ」

おお、これはWinWinの関係で素晴らしい展開じゃないか。ご都合主義バンザイ。

しかもエルフとかファンタジーな人種が来たな。確か長寿なんだっけか。

「ちょうど良く出会えたみたいだな。一文無しだし何も持ってないから借りることになっちまうけど、それでも良かったら何でも話すよ」

握手を求める。友好的な関係を築けそうだな。

「あぁすまない、顔を見せるべきだな。」

右手で握手に応じながら左手でフードを取る。

太陽光を反射して眩く輝くストレートの金髪は肩口まで伸びており、西洋風の顔立ちは人形のように整っている。思った通りの中性的なイケメンだ。

口調とハスキーな声を知らなかったら女性と間違えてしまいそうだな。

こちらを興味津々で見つめてくる深い緑の瞳は、高い知性を感じさせる。

「俺は黒沢竜樹だ。タツキと呼んでくれ」

「人間からはドクと呼ばれている。よろしく」

ドク?ミリタリーな洋画の衛生兵みたいな名前だな。アダ名だろうか?

「ドクってことはドクター、つまり博士から来てるのか?」

「ああ、人間からのアダ名でね。冒険者で生計を立てているんだが、元パーティメンバーが呼び始めて定着したからそのままにしているんだ」

なるほど、探究心からくる知識は本物なんだろうな。

てか英単語そのままかよ。もしかして意訳でもされてるんだろうか?

握った手は女性のように細くて柔らかくて、思わずドギマギとしてしまう。

「そ、それじゃあドク、早速で悪いけどこの世界についてとか俺のスキルについてとか、話を聞かせて貰えるか?」

「まぁ待て。まずは君の安全を確保することが先決だ。そんな服じゃあ転移者だとバレバレだぞ?」

危ねぇ!確かにパーカーもジーパンも無いだろうな。ドクの恰好やファンタジーものの定番からして、中世くらいの技術だろうと予想できる。

パーカーみたいなデザインや縫製の技術は無いだろうし、ジーパンの青い染色も珍しい、もしくは無いかもしれない。これは早く着替えを調達しなきゃならんな。

「確かに着替えが必要だな。用意を頼めるか?」

「もちろんだとも。私の予備を宿へ取りに行ってくるから、そこの茂みで待っていてくれ。認識阻害の魔法をかけて行くから、誰かに見つかることはないはずだ」

言いながら手ごろな茂みへと俺を導くドク。頼もしい奴に会えて良かったわホント。

俺が茂みにしゃがむと、ドクは何やらむにゃむにゃと唱え始めた。

唱え始めると同時に、ドクの胸辺りの高さに魔法陣にしか見えない複雑な紋様が浮かび上がる。

やっぱ魔法あるかぁ!ワクワクして来た。

むにゃむにゃは数秒で終わり、一拍置いてドクが俺に向かって手をかざす。

「認識阻害」

言葉と同時に濃い霧でも発生したかのように視界が白く濁る。

周りを見ると俺の周りに白く濁った丸い壁が発生しているようだ。

お?発動のキーワードは聞き取れるな。さっきの詠唱っぽい奴と違いがあるのか?

まぁ着替えてからゆっくりと聞かせて貰おう。

「それじゃあ行ってくるよ。数分で戻るから」

「おう。悪いけど宜しく頼むよ」

片手をあげつつ歩き始めたドクへ同じように片手をあげて答える。


「ふぅ」

しゃがんだ姿勢から草むらに腰を降ろす。

死亡フラグは回避できたはずだ。ドクが裏切ったりしなければ。

少し話しただけだが、彼は信用できると思う。なんとなくだけどオタクっぽい雰囲気を感じたから、かな。

さて、これからどうするか。ドクは冒険者をしていると言ってたから、同じく冒険者になって日銭を稼ぐことになるかな。

ドクから魔法を教えて貰えば多分大丈夫だろう。

マジカルエンジンとかいう固有スキルはどうやら物質を魔力に変換するような性能みたいだし、魔法職の方が向いてるだろうからな。

それにしても、変換ってエンジンじゃなくねぇ?鑑定スキルとかあったら詳しく調べたいな。

幻聴ことチュートリアルさんは何も教えてくれないしなぁ。次はいつ頃に何を教えてくれるのやら。

と、近くからガサガサと音がして、思わずビクッ!と音の方へ振り向く。

「驚かせてすまない。持ってきたよ」

茂みの上からひょっこりと顔を覗かせたのは、もちろんドクだ。そのまま服を渡してくれる。

「ありがとな。借りるよ」

手早く服を脱ぎ、渡された服を着る。白いシャツと茶色いスボンだ。素材の差か、少しゴワゴワした感じがする。

ぬぅ、ズボンの裾がけっこう余るな。折りこんでおくか。身長の差よりも余りの方が長くて少し悔しい。

「脱いだ服はここで処分していこう。ここへ置いてくれるかい? それじゃ少し離れて。『発火』」

俺が地面に置いた服が突然発火、炎上する。今の魔法は詠唱が無かったな。これも聞きたいことに追加だ。

「よし、それじゃあ私の宿へ行こう。」

「よろしく頼む」

ドクに先導され、俺は異世界で初めての町へと向かった。

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