表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/139

第8話/聞いてくれ俺の武勇伝

 

「……って事があったんだよ」


 帰ってくるなり疾風宮に憑依した雷魔は、武勇伝を黄色の瞳を輝かせながら語る。俺は腕時計を一瞥して、奴の目の前にある食べかけの弁当を指差した。


「へーそうなんだ。ところで、さっさと飯食わないと時間ヤバいぞ」


「マジか。……ククッ、奴等にボコされた時のコイツの情けない声ときたら……ククク」


 雷魔は顔を押さえて思い出し笑いを堪える。すると、疾風宮の瞳が、黄色から黒に変わった。つまり、身体を雷魔から奪い返した。


「ちょっ……! そんな事言わなくてもいいじゃないですか!」


 疾風宮は、顔を紅潮させて俺に抗議する。いや、言ったの俺じゃねえから。

 目が合い、へへへと笑う疾風宮の頰が土で汚れているのに気付いて俺は罰が悪くなった。


「まぁ、なんだ。その……悪かったな、疾風宮。俺のせいで危険な目に遭わちまって」


「いいよそんなの。フルフールさんが代わりに守ってくれたし」


 屈託のない笑顔を向けられ、更に心が痛む。

 と、胸ポケットに入れたスマホが振動して、俺にメールが来た事を教えた。

 俺はポケットからスマホを取り出し、画面を確認する。案の定、黒岩さんだ。


《駅から徒歩約十分の売地にいると伝えてくれ》


 それは、昨日交わした取り引きについての、質素な内容のメールだった。

 質素すぎるだろ。一行って。


 徒歩十分の売地…………ああ、俺がミノタウロスの軍勢相手に激戦を繰り広げたあのデパートの跡地か。(詳しくは三章参照。いや、ダジャレにしたつもりはないから。寒いとか言うなよ!)


 俺はスマホを操作し、《了解。四時までには到着すると思います》と返信した。


 ここで、俺は恐ろしい事に気が付いた。

 黒岩さん、俺のメアドまで知ってる……!


 魔眼の力なんだろうけど、普通に怖いわ。


「誰からのメール? 桃瀬さん?」


 そう訊き疾風宮はクスッと笑う。


「ちげーよバカ! 黒岩さんだ、黒岩さん! 大体、桃瀬が俺なんかにメールよこす訳ないだろ! そもそもメアド知らねーし」


 何で桃瀬なんだよ。頭大丈夫か? ボコされて狂ったのか?


 ニヤニヤした疾風宮は、わざとらしく顎に手を当てた。


「それは良くないな。今すぐ交換しておいで」


「誰目線だよ! ったく。今日の放課後、デパートの跡地に来いってさ。昨日の“取り引き”の返事を聞きにきたんだろ」


「……! そっか、そうだった。という訳でフルフールさん、返事どうするの?」


 疾風宮が尋ねると、瞳の色が黒から黄色に変わった。どういう仕組みになってんだよそれ。


 雷魔は目を閉じ、ゆっくりと腕組みした。うーんと唸りながら、考えるような表情をして、ようやく目を開く。


「そうだなー。昨日一日考えたけど、まぁ話だけはしてやるか。疾風宮オマエに憑いてるから攻撃してくる事は無いだろうし」


「昨日って……疾風宮と魔女っ娘ナントカ読んでたんじゃねーのか?」


「“魔女っ娘みるくは私立探偵!” だ! ニワカが勝手に略してんじゃねー! あと、考えたのはアレだぞ? “魔女っ娘みるくは私立探偵!” 読む前だぞ? いやぁ、“魔女っ娘みるくは私立探偵!” はいいぞ。神漫画だぞ。お前も“魔女っ娘みる――」


「長いわ! 魔女っ娘魔女っ娘うるせぇ! 略せよ!……じゃなくて、放課後、黒岩さん――いや、ルシファーに会ってもらうぞ」


 “ルシファー”と聞いて雷魔の指先が少し震えた。


「わ、分かってるよ。…………ってクソガキ! まだ俺が喋って……!」


 何かと取っ組み合うように雷魔が悶えたかと思うと、奴の瞳は黒く塗りつぶされた。


「く、黒岩さんがルシファーってどういう事⁉︎ ていうかルシファーって誰?」


 突然疾風宮が立ち上がり、俺の胸ぐらを掴んでブンブン振り回した。


「ちょ待っ、やめろ! うげっ…………ふぅ。話すと長くなるからそこん所はヒュ……フ…………あのあいつに授業中にでも訊いておけ」


「おいクソガキ。俺の名前はフュルフュールだからな! 覚えとけ」


「うわっ、急に出て来るなよ……。てーか、むしろ名前は知ってんだよ。そこじゃなくて“フ”にちっちゃい“ユ”なんて発音、日本語にはねーんだよ!」


 民族性の違いについて俺が叫ぶと、昼休み終了のチャイムが鳴った。


「おわっ、もうそんな時間か。うし、教室戻るか」


「そうだねってうぁ……弁当食べ損ねた」




 * * *




 隅の方で雑草が繁茂し、そこ以外は土色に禿げ上がった剥き出しの地面。日の当たらないビルの影には工業用の鉄パイプが乱雑に置かれている。

 数年前までデパートがあった広大な更地に、ダークスーツにサングラスをかけた黒岩、もといルシファーは立っていた。


 時折、腕時計を確認しながら――。


「他の二人はどうしたんだ? 狼月君」


 と、ルシファーが振り返りもせず後ろからやって来た少年に声をかけた。着崩した制服にパーカーを羽織り、首元には黒いネックレスが揺れている。


「疾風宮なら野暮用でちょっと遅れますけど、まぁ数分後には来るでしょう」


 狼月はそう言い、ルシファーの元へと近付く。


「黒岩さん、ちょっと質問しても良いですか?」


「ああ。問題無い。何でも訊いてくれ」


 狼月は少し神妙な顔を見せて、重々しく口を開く。


「黒岩さんって」


 彼はそこで口をつぐんでしまう。

 ルシファーは微動だにせず彼の言葉を待つ。

 二人の間に、緊張感が張り詰める。

 それに耐えられない狼月は、観念して続けた。


「黒岩さんって……俺の電話番号もメアドも知ってるけど、俺のLIMEのIDも知ってるんですか?」


「フッ」


「へへ」


 たわいのない質問に、お互い笑い合う。


「そうだね……今はまだ知らないけど、“魔眼”さえあればいつでも視ることができる。……でも、君が訊きたいのはそんな事じゃないだろう?」


 柔らかい口調のまま、ルシファーは鋭い所を突く。狼月は肩をすくめて、頭をガシガシ掻いた。


「黒岩さんには敵わねえです。これも魔眼の力ですか?」


「こんなの、能力ちからを使うまでもない事だ。本当は何を訊きたいんだ? と、言っても大体見当はつくがな」


「そですか。それじゃ」


 狼月の顔から、笑みが消えた。


「黒岩さん……今そこに立ってる元堕天使の方じゃなくて、空間管理局の本物の黒岩さんって」


「お察しの通り」


 ルシファーは小さく息を吐き、斜め下を見た。


「私は……空間管理局防衛部長黒岩和也を…………殺した」


朝、目が覚めたのが八時……! うわあああ寝過ごした!


という訳で朝の投稿はできませんでした。てへぺろ。すみません。


次回からはなるべく朝に投稿しようと思いますので、これからも見捨てないでくださいませ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ