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第16話/漆黒の堕天使

 

「やれやれ……よっしょっと」


 私は、闇の魔法の使い過ぎで気絶した狼月君をおぶった。


 いくつもの死線をくぐり抜けてきた自慢の愛槍は、彼をおぶるのに邪魔だ。私は空間魔法を使い、それを異空間に転送した。

 はぁ。正体、バレちゃったなぁ。


 私が彼の姉と偶然会う頃から、その事は警戒していたのだが、やはり無理だったか。

 ……にしてもあの娘、本当に無愛想だったな。偶々通りかかった山奥で、使ったら体が粉々になりそうな粗末な転移魔法陣で魔界に不法入国しようとしてる馬鹿がいるなぁと思ったら、まさか狼月君の姉だったとはね。


 目的を聞いて、安全に魔界に行く代わりに協力しろ、と提案したら無愛想ながら乗って来た。乗って来たのに、私とは一言も喋らず、視線すら合わせようとしてくれなかったんだよ。


 ……まぁ指示通り動いてくれたので、良しとしましょう。世の中には、上からの指示や命令に逆らう輩が確実にいるからな。


 そこまで考えて、私はふっと息を漏らした。その輩は……私の事じゃないか、と。


 私がまだ天使だった頃、私は自らの力を過信して、神に逆らい戦いを挑み、結果ボロカスに負けた。熾天使の二つ名は剥奪され、蔑んだ目に見送られて私は魔界に墜とされた。


 全てを失った私は、神への復讐を決意する。


 その同志を探して結果的に出来たのが魔闘結社だ。私は、時に「力」を使ってでも仲間をがむしゃらに集めた。気付けば「魔界最大の悪魔連合」の異名で恐れられる程、勢力は拡大していた。


 仲間も増えたし、私は人間界と魔界とを隔てる二世界門トライブ・ディバイダーの襲撃を企てた。二世界門襲撃計画で最もよく働いてくれたのが、私の右腕として信用していたベリアルだ。彼の力もあって、計画は着々と進んでいった。


 だが、実行日に事件が起こった。


 ベリアルとその協力者が、司令官である私に嘘の状況説明を教えたのだ。自然、嘘の情報に対する指示は間違ったものとなる。炎・氷・雷の魔法石の強奪には成功したものの、風の魔法石を盗り損なった。結界の破壊は不完全なものとなり、計画は失敗に終わった。


 それだけならまだ良かった、いや良くない。ともかく、私は失敗を責められ、全団員から蔑んだ目で無能扱いされた。


 少し「力」を使って反乱分子を黙らせることはできる。魔法を弱体化させる強力な封印魔道具が首筋に埋まってさえいなければ。 この極小の針の形をした封印魔道具も、一連のドサクサに紛れて付けられたのだ。


 ベリアルが、暴力も厭わない私のやり方を良く思っていなかったとしても、それに共感する者が沢山いたことに当時の私は衝撃を受けたものだ。


 ……でも、分かってる。

 暴力で築いた関係なんて偽物だって事くらい。とは言え当時の私は焦っていたし、何より他のやり方を知らなかったんだ。


 そこからは…… おっと。少し自分語りが長過ぎたか?

 いや、全ての生物は、多かれ少なかれなんらか古傷を抱えて生きているもの。たまに吐き出しても罰は当たらないだろう。


「君もそうだろ? 狼月君」


 私は、後ろで寝息をたてる狼月君に独り問う。彼も何か抱えていそうだ。


 私は小さく笑い、転移魔法を展開した。




 乱舞する復讐鬼 完


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