第7話/奇跡の一致、なんて言ってる場合じゃない
……痛てて、ん?ここはどこ?
――廃工場。
俺は誰?
――狼月 灰。
なんで俺は廃工場で腕から血を流して倒れているんだ?
――ミノタウロスが
全て思い出した。
「待ってろ……桃瀬……!」
警察犬より高性能な嗅覚をフルに使って俺はミノタウロスの行方を追った。
* * *
……痛てて、ん?ここはどこ?
――わかんない。
私は誰?
――桃瀬 麗華。
なんで私はよくわかんない部屋の中で磔にされてるの?
――あの怪物が
全て思い出した。
「助けて……灰……!」
私は今唯一頼れるたった一人の名前を呼んだ。
「ヘエ、アノ餓鬼『灰』ッテイウノカ」
「‼︎」
いつの間にかあの怪物が隣に立っていた。
「……気安く『灰』って呼び捨てにしないでよ……。灰を灰って呼んで良いのは私だけなんだから……」
精一杯虚勢を張ってみたが、鎖で縛られた手が震えている。
「アレカラ三時間タッタ。『灰』ハ助ケニコナカッタナ。モウ夜ダ……晩飯ノ時間ガ来タ」
「⁉︎」
「新鮮ナ若イ女ヲ食ウノハダイタイ四百年ブリダナ。グヘヘ……楽シミダゼ」
怪物は斧を取り出した。
「マズハ腕ヲイタダクカ。イヤ、叫バレテモ面倒臭イ。首ヲキリオトソウ」
怪物が私の首に手をかける。
「いやっ……やめて……」
持っていた斧を振りかぶる。
思わず目をぎゅっと閉じると目から涙がこぼれた。