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第4話/異世界転移?

媚びた訳ではありません。本当に。

 

 裏山にて




「ここら辺かな……」


 俺は誰に言うでもなく呟いて、ドスンとリュックを地面に置いた。その前にしゃがみ、ナイフを取り出す。


 俺はナイフの鞘を抜き、先端部分で固い土の地面を掘り返してみる。うん。魔法陣を描くにはちょうど良い固さだ。

 ナイフに付いた土を払い、今度は魔導書を引っ張り出した。


 軽く五百ページはあるそれの目次を開き、苦労しつつ目当ての章に行き着く。

 そこに書かれているのは、転移魔法陣の描き方だ。

 魔法陣にも色々種類があって、初心者向けからベテラン専用まで幅広いが、俺はなるべく単純な物にした。


 俺は地面に膝をつき、左手に持った魔導書を参考にしながら地面にナイフで魔法陣を刻んでいく。

 その時、分解魔法の設計図を密かに組み込んでおいた。

 これで良し……多分。


 成功すればこの魔法陣と同じ座標軸の魔界のどこかに転移する。

 失敗すれば……素粒子レベルで分解されて死ぬだろうな。


 ……まるで他人事のように、自分の命に関わる事を考えていた。まぁ、これからやる事に比べたらこんなのちっぽけな問題だ。


 俺は、リュックに魔導書とナイフをしまい、栄養ゼリーを取り出した。キャップを開け、口をつける。


 生きるか死ぬかの大博打、か。上等だぜ。


 袋を握り潰し、一気に飲み干した。

 中身を吸われ、平たくなったパッケージにキャップを閉めて、リュックにしまう。


 やるか。


 俺は、リュックを背負い魔法陣の中心に立った。

 呼吸を整え、意識を集中させる。


「転移!」


 魔法陣が明るく発光して、山が不吉な地響きを立てる。

 気分はまるで、壊れかけのジェットコースターに乗っているようだ。


 いや、そんな安っぽい言葉では表せない。

 なんと言うか、口腔カラカラ、毛穴ゾワゾワ、心臓バクバク。分かんないか。


「‼︎」


 素粒子分解が始まったのか、全身がすり潰されるような激痛に襲われる。それに加えて体が気体に変わってしまったかのような不快な浮遊感。


 クッソ……持ってくれよ、俺の体……!


「うおおおおおおお!」


 山の中で叫びを上げ、俺の意識は吹き飛んだ。




 * * *




「…………でやんす…………起き、うわ、動いた」


 俺は、誰かに体を揺さぶられる感覚で目が覚めた。


 ん、ここどこ?


 目を開けると、赤い空が澄み渡っていた。


 赤い空?


 俺は弾かれたようにガバッと起き上がった。


「ぐっ……」


 突然動き出したからか、全身に鈍い痛みが走る。

 俺は心臓を押さえてうずくまった。

 痛みに耐えて辺りを見渡すと、それは明らかに山のものではなかった。


 全ての窓ガラスが割られて風や強盗が入り放題になっている壊れかけの一軒家。

 某子豚が作った藁の家より貧相な雨風すら凌げないボロ小屋。

 風化が進んで地面と一体化しつつあるレンガの家。

 それに加えて、目付きの悪いストリートチルドレン共が、こちらを遠巻きに窺っている。


 夢じゃないなら、こりゃ、ひょっとすると……。


「おい、あんた……」


「ぎゃああああああああ!」


 誰もいないと思ったら誰かに肩を突っつかれて、俺は絶叫してしまった。


 声のする左を向くと、薄汚いボロ切れを身に纏った深緑の肌の、いわゆるゴブリンがいた。

 人間の少年に見えなくもない顔立ちだが、頭を突き抜ける大きな耳が彼を人外だと語っている。


「な、何でやんすか、あんた。倒れてると思ったら急に叫び出して。オイラ、これでもあんたを助けてやったんでやんすよ」


 背は低いが、声のトーンや雰囲気から、俺とほぼ同じ歳だと推測した。

 それならタメで良いよな。


「ゴブリン君。つかぬ事を聞くようだが、ここは魔界か?」


「オイラの名前はゴブリン君じゃなくてコネチカットでやんす。ココは魔界でやんすが、そんな質問するって事はアンタひょっとして魔界に逃げて来た現世の怪物か?」


 コネチなんとかは、訝しげに俺の目を覗き込む。

 そうか。転移は成功したのか。


 俺は起き上がると、服に付いた土をパンパン払った。


「俺は怪物じゃない。もっとも、人間でもないけどな。いや、今はそんな事はどうでもいい。突然悪いが魔闘結社の場所、知ってないか?」


「さぁ?聞いた事も無いでやんす」


 モブのゴブリン、縮めてモブリンはアメリカ人のようにオーバーに肩をすくめてみせた。


 こうなる事は予想通りだった俺は、そこら辺に転がっていたリュックを拾い上げ、それをかき回し、触るのもおぞましいある物を発掘した。それを、モブリンに投げつける。


 奴は反射的にキャッチした。


「うわああああああ!」


 モブリンは手の中を見て叫び声を上げた。

 いちいちオーバーリアクションだなぁ。


「イモリの黒焼きだああああああ!」


 モブリンの歓喜の絶叫を聞き付けたストリートチルドレン共が、一斉に走り寄って来た。


「うわああああああああ‼︎」


「すげええええええええ‼︎」


「本物だあああああああ‼︎」


「イモリの黒焼きなんて初めて見たぜ‼︎」


「俺も俺も‼︎」


 俺は、はしゃぐストリートゴブリン共の前に立った。場がスッと静かになる。イモリの力すげえ。


「魔闘結社の道を教えてくれたらあと二匹やる」


 そう言い捨てた。


「魔闘……結社?」


「なんだそれ?」


「よく知らないけど、なんかヤバい奴等らしいぜ。オレの親父が言ってた」


「へー。そんな事よりイモリの黒焼きどうする?」


「そうだなー、オレが尻尾を……」


「もっと真面目に考えるでやんす! イモリあと二匹ももらえるんでやんすよ! ……じゅるっ」


 ああ……コイツら使えねー。


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