第3話/ウケ狙いのスタンプを買って結局使わない
☆投稿時間変更のお知らせ☆
今までは火、金、日でしたが、いかんせん覚えづらく、僕も投稿するのを忘れそうになってしまうので、明日からはキリよく月、水、金の朝に変更します。
☆終わり☆
「その、“LIME”のアドレス教えて!」
な、何だって 〜⁉︎
因みにLIMEとは、若者の、と言うかスマホを使う全ての人にとって欠かせない超有名コミュニケーションツールである。
それのアドレスを桃瀬と交換するなんて。お前にその気が無くてもカン違いしちゃうぞ。
「その、アドレス、アドレスは、ど、どう言う意味で?」
予期せぬ話に戸惑いを隠せない俺は、混乱して日本語が分からない人みたいになってしまった。しょうがないだろ!だって、ジメジメした日陰の住民だった俺に女子とのアドレス交換なんてイベント起こった事無いんだから!
だが桃瀬も、俺の質問を聞いて顔が見る間に真っ赤になった。
「え⁉︎ そ、そそそそれはアレだよアレアレ! 灰の事クラスのグループLIMEにまだ誘ってなかったなぁ〜ってだけだからね! 別にアレとかそー言うのじゃないからね! だからカン違いしないでね!」
それだのアレだの代名詞が多くてさっぱり分からんぜよ。
……待てよ。もう四月終わりに掛かってるよね?俺、そもそもグループLIMEの存在すら知らなかったよ?え?俺ハブ?何それ酷くね?
胸の高鳴りが一気に冷めた俺は、いつもの冷静さを取り戻した。
「まぁ落ち着けや。交換してやるから」
すると桃瀬は、大きな目を更に見開いた後、安心したように顔を綻ばせた。
「ホントに⁉︎ ヤッターありがと!」
「……おう」
そんなに喜ばれる事したかな?
俺は疑問を抱きつつ、ポケットからスマホを出した。
電源を入れて、家族との連絡用に入れておいたそれを起動させる。とは言え使い方がよく分からないので、スマホごと桃瀬に渡した。
「おいおい、無防備だね……」
「別に。見られて困る物なんて無いし、桃瀬はそう言う事するような奴じゃ……やっぱり返して」
「何それヒドい!」
そんなやりとりをしている間に、桃瀬は二つのスマホを器用にこちょこちょ操作している。時折見せる笑顔に、やっぱり返してもらった方が良かったなーとか思っていると、桃瀬が「ほいっ」と俺のスマホを投げてきた。
「うわ危ね! 他人のだと思ってこの野郎!」
俺は軽くパニックになりながらも、宙に浮くスマホを間一髪で受け取った。
「フフ、テンパり過ぎだよ。それじゃ、私、部活あるから! じゃーね!」
いつの間にかバッグを提げた桃瀬が、後退りしつつ手を振った。
「……じゃ。月曜日」
時間が無いのか、脱兎の如く教室を出た桃瀬を横目に、LIMEを確認する。
「新しい友達」の欄にRe-Kaと言う文字とともに、数人の友人が一緒に写っているイマドキのJKらしいキラキラした自撮り写真が追加された。
Re-Ka。レーカ、か。
それって幼稚園時代、俺が付けたお前のあだ名じゃねーか。
……まさかね。まだ、憶えてるなんて事無いよね。
と言うかレーカってよく考えればあだ名でも何でもないな。アイツ、下の名前麗華だし。
「友達」が一人増えた画面を眺めてぼんやり考え事をしていたら、メッセージが届いた。桃瀬だ。
〔グループ招待するの忘れてた!後でね!〕
漫画チックな猫がテヘペロしてるスタンプが添えられていた。
フッ、可愛いな。この猫。
どう検索すればこんなスタンプに辿り着けるんだよ。
俺は、愛おしい温もりを持ったスマホをカバンにしまい、独り教室を後にした。
* * *
家に帰ってまず、姉貴がいない事に気が付いた。
学校か?ったく、殴り込み行くって言ったじゃん!
……いや、言ってない。
まぁ良いか。これ以上姉貴に借りを作る訳にはいかないからな。
俺は親父の書斎に行った。
百は優に超えるずらっと並んだ分厚い魔導書の中から目当てのブツを探す。背表紙のタイトルはカッコつけた英文字ばかりなので、その内容を確認するには本棚からいちいち引っ張り出して中を読まなければいけない。因みに本文は日本語だからそこは問題無い。
本棚から引っ張り出して読む作業を十回くらいして、ようやく探してた魔導書に辿り着く。
「あった………」
嬉しさに、思わず声が漏れた。
内容は、転移魔法についてだ。なぜかって?魔界に行くためさ。
トライブ・ディバイダーの結界によって異世界転移が制限されていた頃の怪物共は、現世に侵入する時、自分の体を素粒子レベルで分解してそれを潜り抜けてきたらしい。俺が魔界に行くには、それしか方法が無い。
だが、俺も狼男とは言え、半分は人間。
怪物より脆いから体にかかる負担も大きいだろう。
でも、今はトライブ・ディバイダーの結界は機能していないし、負担もそれなりに軽減される。かも知れない。
俺は部屋に戻り、魔導書と、魔法陣を描くための錆びたナイフやらその他諸々をリュックに詰めた。
……腹減ったな。
でもここでガッツリ食うと動きが緩慢になってしまうんだよな。
俺はリュックを提げて台所に向かい、加工食品の引き出しをガサガサ漁る。
几帳面に整理された引き出しの中では、缶詰やらレトルトカレーやらが行儀良く整列していた。なるべくこれを崩さないように引き出しの中を見回す。
お、見ーつけた。
エネルギー補助特化型ゲル、いや何でもない、ただの栄養ゼリーだ。
ぷにぷにと柔らかいそれを掴み、リュックに放り込む。
丁重に引き出しを閉じた俺は、台所を後にした。
うっひょ〜!
ブクマが一件増えてるじゃないですか〜!
読んでくれて本当にありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!




