第8話/煮物にちくわって、入る?
4時間目の終了を告げるチャイムが鳴り、昼休みの時間になる。
俺はスクールバッグから弁当を取り出し、自席で広げた。
今日は疾風宮が寄ってきた。弁当箱を持っている。
「ねぇ灰君、一緒に昼」
「ミヤっち、一緒に食堂で昼食べよ!」
疾風宮が俺を誘うのと雪沙が疾風宮を誘うのが、ほぼ同じだった。
「あ……灰君」
疾風宮が気まずそうに俺の顔を伺ってきた。
俺はふっ、と笑い、疾風宮を一瞥した。
「気にすんな、行って来いよ」
「……ごめん、また今度ね」
「ああ、また今度な」
疾風宮は、名残惜しそうに俺のことを振り返りながら雪沙に手を取られ教室を後にした。
……雪沙、別に一礼とかいいから。むしろやめて。心の距離を感じてしまうだろ。
桃瀬も女子グループに参加して、俺の周りは静まり返った。
俺は昨日の残りの煮物を食べて、話し相手がいないためぼんやりと思考を巡らせる。
この午前中だけで雪沙がどんな奴か大体分かった。
優しくて元気で時々真面目。あとボディタッチが多い。
そういう女子は……はっきり言って苦手だ。
そういう女子が俺に声をかけてくると、真面目な優しさから俺を憐れに思って話しかけてくれている、とかつい邪推してしまう。まぁ、実際そうなのだが。
でもたまに、純粋な好意から話しかけてくる奴もいて、その事実を知ると疑心暗鬼になっていた醜い自分を吐き気がする程嫌いになる。
暗い事を考えるのはやめよう。飯が不味くなる。
音楽でも聴こうとポケットからスマホを取り出すと、タイミング良く着信音が鳴った。
「!」
俺のスマホが本来の目的を果たす時は、母のお使いか、架空請求くらいである。しかも両方メール。ぶっちゃけ、スマホで人と話すのはこれが初めてだ。
誰だろうと思ったが、よく考えてみれば俺の電話番号を知っている人間は地球上に2人しか存在しない。無論、父と母である。
なぜ、この時間に……?
訝しげに通話ボタンを押し、席を立った。ドアを開け、廊下へ向かう。
人通りのそこそこ多く適度に賑やかな廊下なら、俺が電話をしていても気にする奴はいまい。
何だろうねこの緊張感。面と向かって会話する訳じゃないのに。むしろこっちの方が緊張する。手汗とかヤバいわ。
『もしもし、狼月 灰君だね』
電話に出たのは、父でも母でもないおっさんだった。
……誰?




