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第4話/ゆるふわ系小動物

 

「こんな偶然、あるんだね」


「ああ、なんだよこの展開。お前だけいい目にあいやがって。俺なんて朝っぱらから姉貴と喧嘩だぜ」


「楽しそうで良いじゃん……あ、来た」


 疾風宮が後ろのドアを見て言った。

 振り向くと、雪沙と桃瀬が机と椅子を2人で運んでいた。


「おい、疾風宮。チャンスだぞ。机運ぶの手伝ってやれ」


 俺は、声を潜めて疾風宮に雪沙を手伝うよう言った。


「そ、そんなの無理だって。僕なんかが雪沙さんの机運ぶの手伝ったら逆にキモがられるよ」


「はぁ、ダメだなぁー。だからお前は3軍男子なんだよ」


 自分が何軍男子なのか、そもそも俺の存在は認識されてるのかどうか分からないが、いや、興味ないが、「目クソ、鼻クソを嗤う」と言う慣用句が頭をよぎり、閉口した。



「よいしょ。はぁ〜、疲れた。ありがとね、麗華ちゃん」


 そんなアホなやり取りをしている間に、雪沙が机を引きずり俺の後ろまでやって来た。


「へへ、どういたしまして! なんか分からない事とかあったら何でも聞いてね!」


 相変わらず桃瀬は笑顔で答えた。何でこいつは初対面の人間にここまでオープンになれるのか。永遠の疑問である。


 雪沙は、疾風宮に気付いたのか俺達の方に向き直った。


「やっほー、ミヤっち。久しぶり!」


 舌足らずのキャンディボイスで疾風宮を呼び、手を顔の前で小さくひらひら振った。


「うぁ。ひ、ひ、ひさ、久しぶりィ! 雪沙さん」


 何こいつ。テンパりすぎだろ。「久しぶり」すらちゃんと言えてないじゃねーか。


 わっかりやすーい。


「あと……えっと…………すいません、名前……」


 仮にも同い年の同級生なのに、敬語で謝られた。

 その表情にはどこか怯えのようなものすら混じっている。


 俺は、雪沙との心の距離を感じてショックを受けた。


「狼月」


「あ、そーそー。狼月くん。よろしくね!」


 俺は改めて雪沙を見た。


 肩の高さで切り揃えられ、ウェーブのかかった明るい茶髪。顔はいわゆる童顔で、前髪を右に流したゆるふわ系のスタイルがよく似合っている。


 ボケっと顔を眺めていたら、どうしたの?と言いたげに首を傾げて雪沙がこっちを見てきた。


 一瞬目が合い慌てて下に目を逸らしたが、校則に余裕で引っかかる短いスカートからのびる長い脚が目に入ってきて、思わず下を向いた。


 ……くるぶしソックスは校則違反だぞ。

 俺と一緒に生活指導室の常連になりたいのか?


「はっ! シノそろそろ職員室行かないと! 先生から“じゅーよーしょるい”もらうんだった!」


 “重要書類”だと理解するのに5秒ほどかかった。


「それじゃまたね、麗華ちゃん、ミヤっち! ……と、狼月くん! 」


 雪沙は、小動物を連想させる走り方で職員室へと去って行った。


 俺は付け足しかい。


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