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第3話/季節外れのNew Comer

 

「はいコレ保護者会のプリントな。親に見せるように」


 朝のH・R(ホーム・ルーム)。恐らくどの学校でも同じようなやり取りをしているだろう。

 ありきたりで簡潔。平々凡々として、どこか平和。


「じゃあ最後に、大事な知らせがある。噂で聞いている奴もいるかも知れないが、うちのクラスにイギリスから転入生が来る」


 突然の発表に、クラス中がざわっと揺れる。

 マジかよ。

 この時期に?

 どんな子かな?

 女子だったらいいなぁ〜。


 クラスメイトは思い思いの感想を口にしたが、1人の男子生徒ーー疾風宮 みどりーーは、明らかに他の生徒とは違った感情を抱いていた。



 そうだったらいいな、そんな訳ないか。



「それじゃ、前に出て軽く自己紹介してもらおう。お前ら、歓迎してやれよ。おいで」


 教師は、教室の外にいる転入生に手招きした。期待と緊張で教室の空気が張り詰める。


 教師に呼ばれて教卓の前に立った少女は、恥ずかしそうに明るい茶色の長い前髪を指でくるくる弄った。


「えーと、こんにちわ。じゃなくて、おはよーございます。雪沙 紫乃(ゆきさ しの)です。シノ、とか、しのん、って呼んでください。親の都合でイギリスに引っこして、そのすぐ後日本に戻ってきただけなので、イギリス語とかは全然分かんない、です。1年間よろしくお願いします」


 緊張していた転入生を暖かい拍手が包み込む。


 少女はその様子に、はにかんで会釈した。


「はい、よろしくね。席は1番後ろの窓際にするか。机を運ぶからこの後用具室に来なさい。桃瀬、お前のすぐ後ろの席だから色々教えてやってくれよ。狼月はあまり頼りになりそうにないからなぁ」


 そう言った後、教師は制服の着用規定に違反している少女のスカートをチラチラ見た。


 教師に“桃瀬”と呼ばれた女子生徒は「はい」と答え、頼りないと言われた“狼月”は「ケッ」とそっぽを向いた。


 教室を何とも言えない苦笑が包んだ。






「あんのクソ野郎、ふざけやがって! 何であのタイミングで俺をイジった! そこそこ知名度の高いお調子者ならまだしも何で俺なんだよ! 微妙な空気になるのぐらい目に見えてるだろ! 分かれよ! 何年教師やってんだあのオッサンは!」


 H・Rが終わるなり、俺は近寄ってきた疾風宮に烈火の如く吠えた。


「ま、まあまあ……落ち着いて。少なくとも僕は面白かったよ」


「それで慰めてるつもりかよ。ったく、心ここにあらず、って感じだな」


 そりゃそうか。夢にまで見た想い人が同じクラスに来たんだから。


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