第18話/なにゆえ病院のベッドは固い?
「まてよ……しんちゃん……レーカ…………ん?」
目が覚めた。
薄目を開けると、白い光が眼球を鋭く刺した。思わず顔をしかめる。
ここ、どこ?
ムリヤリ目を開けると、白い天井が見えた。
薬品の独特な匂いがツンと嗅覚を刺激する。
……病院⁉︎
はっきりしない頭で、うわごとのように呟く。
「俺……何があった……」
「あ、起きた」
耳もとで声がした。俺は頭を左に傾ける。そこには椅子に座った桃瀬と疾風宮がいた。
「レーカ……いやなんでもない、桃瀬……」
夢のせいで昔の呼び方になってしまった。恥ずかしさで視線を外した。
桃瀬は腕を伸ばして、俺の頭をベシッ!と叩いた。
「もう、心配させて! この馬鹿! 声掛けても全然起きないから救急車呼んで、そしたら状況を細かく説明させられて! 嘘考えるのすっごく大変だったんだからね!」
「まあまあ、そう怒らないで。目を覚ましてくれただけで良かったじゃん」
「う……ごめん」
反論の余地がない。迷惑をかけ過ぎたな。
「この馬鹿……」
顔は怒っているのに目が潤んでいる。
桃瀬は俺の前にしゃがみ込んだ。顔をベッドに埋め、荒い息を吐いた。
「もう……心配したんだよ……。このまま灰が、起きなかったら……死んじゃったら、どうしようって。あんたが寝てる間、ずっと不安だった……。こんなに心配かけて、許さないよ……。良いラーメン屋、灰の奢りで連れてってくれないと……絶対許さないからね……」
俺は思わず笑ってしまった。
怒ってるのか心配してるのか全然分からないや。
「分かった分かった。今度連れてってやるから、病院で泣くな。なんか不吉だから」
俺は少し体を起こし、桃瀬の小さな背中をポン、と叩いた。
「約束だからね」
「はいはい」
* * *
すっかり暗くなってしまった帰り道。
夜の静寂が包む街を俺達は歩いていく。
「闇の魔法についての話は全部灰君のお爺さん、えーと、
岩尾さんだっけ。から聞かせてもらったよ。なんでも使いすぎるとヤバいんだって?」
「うん。疾風宮、イヴァンな。誰だよ岩尾って。苗字違うじゃねーか。いや、惜しくない。全然惜しくないから悔しがるな。最初の『い』しか合ってないからな」
なぜイヴァンと岩尾を聞き間違えるんだ。耳って言う以前に頭大丈夫か?
「灰。約束、忘れないでよね」
隣で桃瀬が小指をくにくに動かしてラーメン屋の念を押した。
「分かってるって」
俺も、桃瀬の真似をして小指を立てた。




